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2017/02/27

コラム 中国におけるニセモノ対策 ~商標登録の重要性~

山田ビジネスコンサルティング株式会社
資本戦略本部兼海外事業本部
大成法律事務所に出向中

 

■「中国」と「ニセモノ」

 

 「中国」という言葉を聞いた時に、「ニセモノ」や「海賊版」というイメージを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。昨年末に、「大江戸温泉物語」という名前の入浴施設が上海で営業していることに対して、日本で同名の著名な入浴施設を運営する会社が、全く当社と関りがないというコメントを発表したことも、記憶に新しいかと思います。
 また、漫画、アニメ、ゲーム、そしてこれらのキャラクター、日本が強みを持つコンテンツを中国で展開する上でも、中国においていかに「ニセモノ」を防ぐかは、極めて重大な課題と言えるでしょう。

 

■「ニセモノ」への法的対策

 

 中国において自社のブランドやノウハウを守るための戦略として、知的財産の権利化が非常に重要です。自社のブランド名が中国において無断で使用されてしまったケースを想定すると、ブランド名が中国において商標登録を経て権利化されているか否かによって、対策の難易度が変わってきます。
 具体的には、商標権を登録しているか否かによって、次のような対策が考えられます。

 

①中国において、商標権を登録している場合
 この場合、商標権侵害として、裁判所に訴訟を提起して侵害の差止めや損害賠償を請求することができます。また、当局(工商行政管理部門)に対して、侵害行為の停止命令や罰金等の措置を講じるよう請求することもできます。

 

この場合には、第三者による商標権の侵害行為、つまり、第三者が、登録商標を無断で使用していることを立証できれば、基本的には救済を受けることが可能です。

 

②中国で、商標権を登録していない場合
 この場合、商標権侵害を主張することはできませんが、「不正競争防止法」に基づき、侵害の差止めや損害賠償請求、当局(監督監査部門)への通報などが可能です。
 ただし、「不正競争防止法」に基づく権利救済を実現するには、例えば、次のような要件に該当することが求められます(不正競争防止法5条2号・3号)。

 

1)周知商品特有の名称などを無断で使用し、又は類似する名称などを使用して、周知商品との混同をもたらし、顧客に周知商品と誤認させること
2)他人の企業名称又は氏名を無断で使用し、他人の商品と誤認させること

 

1)については、「周知商品」と言えるかが問題となります。
最高裁判所の解釈によれば、「周知商品」とは、中国国内で一定の市場周知度を有し、関連する公衆に認知されている商品を言います。
例えば、日本では一定の知名度を有するが、中国では一般的にまだ知られていないような場合には、「周知商品」と認定されることは難しいと考えられます。

 

2)については、企業名や氏名の無断使用に限られているため、商品名などが無断で使用された場合には、救済を求めることが難しい点が問題となります。

 

これらの要件を満たさないとしても、不正競争防止法が一般的に禁止する、「他の事業者の合法的な権益に損害を与え、社会の秩序情況を乱す行為」に該当する(同法2条)と主張することも考えられますが、文言が抽象的なことからも伺えるように、容易に認められないと考えられます。

 

このように、商標が登録されていれば、無断使用などの事実などを立証できれば権利回復の途が見えてきますが、商標が登録されておらず、「不正競争防止法」に基づいて権利救済を行おうとすれば、その難易度は高いものと言えます。

 

■商標登録における「先願主義」

 

 一方で、商標登録には「先願主義」という原則があります。これは、その商標をこれまでに実際に使用していたかどうかではなく、申請時期が早い者が商標権を取得するという原則です。
日本において、ある程度の著名なブランド力を有する日本企業が、中国で業務展開しようとした際に、すでに自社ブランドが中国で何者かに商標登録されてしまっていた、という事例も少なくありません。過去に問題となった、「クレヨンしんちゃん」事件を思い起こす方もいるでしょう。
もっとも、「先願主義」は一部修正されており、商標の出願登録は、他人の既存の権利を侵害してはなりません。他人がすでに使用している影響力のある商標を、不正な手段で抜け駆けして登録してはならないとされています。
上記のアニメ作品の事例でも、日本企業は商標登録無効審判の申立てを行い、8年間近くを経ましたが、最終的には商標の無効が認められました。
このような事態を防ぐためにも、現在は中国市場にすぐに進出することを計画していない場合であっても、日本で一定の知名度を有しているブランドやコンテンツについては、あらかじめ、中国で商標登録をしておくことも考えられるでしょう。

 

■中国における商標権の「現在」

 

世界知的所有権機関(WPO)が2016年に発表した、「世界知的所有権指標2015」によれば、2015年の世界の出願種別の商標申請件数は840万件に達しました。このうち、中国の出願種別の申請件数が最も多く、283万件に上り、世界全体の3分の1を占めました。これは2位のアメリカ51万件、3位のEU36万件であるのに比べて、圧倒的な申請件数です。なお、日本は4位で34万件でした。
著者が出向している、大手法律事務所の知財専門弁護士から聞いた話では、以前はアメリカ、ヨーロッパなどの欧米企業が商標登録を行うケースが多かったが、最近では、中国企業による商標登録のケースが増えている傾向にあり、日本企業が商標登録を行うケースは、依然として少ないと感じるようです。
日本市場が今後増々縮小していく中、中国市場は地理的にも規模的にも、日本にとって有力なマーケットに位置付けられます。日本企業が中国市場で存在感を示していくためには、商標権の登録をはじめとする、知財戦略が極めて重要です。
その際には、中国の知財実務に精通した弁護士・弁理士・コンサルティング会社などの専門家に相談することも、一つの有効な手段と言えるでしょう。

池野 幸佑

山田コンサルティンググループ株式会社
資本戦略本部兼海外事業本部
大成法律事務所に出向中

池野 幸佑

弁護士(東京弁護士会所属)。
2012年1月山田ビジネスコンサルティング(株)入社。M&Aアドバイザリー業務に従事し、多数の国内M&A案件に関与。
2014年5月より、中国最大手の北京大成(上海)律師事務所に出向。
設立(合弁含む)、撤退・縮小、債権回収、知的財産権対策、契約書審査、訴訟対応等、中国進出日系企業の法務全般に関わる。

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