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2018/04/16

タイの二輪車(バイク)業界の見通し

山田コンサルティンググループ株式会社

1-1 バイク業界の概要

●タイは、世界有数のオートバイの生産地として知られ、世界大手企業(ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキなど)が製造拠点を置いている。  
●現在、タイ国内には10社のオートバイ製造会社があり、タイ全体での年間生産能力は300万台を超えている。
●オートバイの製造は「CBU(完成車)」と「CKD(現地組立車)」に分類される。完成車が全生産の70%以上を占め、主に国内で販売されるのに対し、現地組立車の生産は輸出向けのみであり全体に占める割合は小さい。

出所: タイ自動車研究所、タイ投資委員会、および各企業公開情報の抜粋

●2012年に、タイのオートバイ生産台数は300万台を超えた。主な理由は、洪水被害に遭ったオートバイの買換えによる国内の需要の高まりである。 しかし、その後2013年-2015年には、景気後退、農作物価格の下落、コメ担保融資制度に基づく農家への支払遅延による家計債務の上昇が国内のオートバイ販売に影響して、完成車の生産台数を押し下げた。
●2016年以降タイのバイク業界は復活の兆しを見せている。国内市場の回復により、2017年には、生産台数は250万台に達した(前年比4%増)。

1-2 バイク業界の概要

●製品のタイプ別に生産台数をみると、ファミリータイプは2012年から2016年にかけて200万台超から140万台へと大きく落ち込んだ。
●一方、同期間中スポーツタイプは2桁の伸び率を示している。スポーツタイプや大型バイクの人気の高まり、および二輪産業の競争力強化を目的とする政府の投資優遇措置が、スポーツタイプの生産台数増加の要因となった。

●2007年に導入された、大型バイク製造業を対象とする高額の投資優遇措置は、世界大手のオートバイ製造会社を惹きつけてタイ市場への参入をもたらし、国内外両市場に向けたオートバイの生産台数の継続的な拡大に寄与している。
●BOI(タイ投資委員会)発表のデータによると、大型バイクの生産台数は、2010年から2016年に年平均成長率28%と大きな伸びを見せた。ハーレーダビッドソンの新規投資と生産能力拡大が今後の大型バイクの生産台数拡大をけん引する見通しである。

1-3 バイク業界の概要

最近の大型バイク製造に対する支援政策と投資優遇政策

タイ政府は二輪車産業を継続的に支援しており、タイ投資委員会(BOI)は、自動車製造業に対するものと同様の投資奨励策を、オートバイ製造業にも実施している。
●2007年、排気量500cc以上のオートバイ製造に対し最長8年間の法人所得税を免除する措置がとられた。
●2012年、この条件が修正され、排気量248cc以上のオートバイ製造も含まれるようになった。
●2017年第1四半期になって、タイ投資委員会(BOI)は、経済特区の東部経済回廊(EEC)(1)における促進ターゲット産業の1つとして排気量500cc以上のオートバイ製造を指定した。EEC内の排気量500cc以上のオートバイ組立業者への投資に対しては、法人所得税が最長5年間免除され、さらにその後5年間は半額免除される。

2017年のタイのバイク業界直近の動向

注: (1) EECとはタイ東海岸地域は、3つの県、ラヨーン県、チョンブリー県、チャチューンサオ県を指す

2-1 国内市場実績

●タイのオートバイ製造業は国内市場への依存度が高い。2009年以降、タイの全オートバイ製造会社の総販売台数の60%以上を国内販売が占める。工業省所管のタイ自動車研究所(TAI)によると、2017年の国内販売台数の合計は約180万台で、全メーカーの総販売台数の68%を占めた。一方、輸出が占める割合は32%だった。

タイのオートバイ製造会社の販売台数

出所:タイ自動車研究所 (TAI)

●運輸省陸上輸送局 (DLT)発表の、二輪車登録台数(累計)(2)のデータによると、タイにおけるオートバイ市場の規模は東北部が最も大きく、これに北部、バンコク首都圏、南部が続く。
●2013年-2015年は、農業所得の下落と深刻な干ばつが内陸部のオートバイ市場に大きな打撃を与えた。東北部と北部のオートバイの販売は、コメ担保融資制度の支払遅延による家計債務悪化の影響を受けた。一方、南部ではゴムの価格暴落の影響を受けた。

注: (2) 運輸省陸上輸送局発行の新規登録台数のデータは、実際の国内販売台数(国内組立車と輸入を含む)を表す。他方、タイ自動車研究所の国内販売台数のデータは、国内製造会社による国内販売台数を表すが、両者の数値にほとんど差異はない

2-2 国内市場実績

●2016年以降、国内市場は復活の兆しを見せている。加えて2017年には、オートバイの国内販売台数は4%増加した。これは農作物価格の改善によって内陸部の購買力が向上したことに起因する。
●2017年末時点の二輪車新規登録台数は、バンコク首都圏、東北部、北部といった主要市場ではそれぞれ5%、3%、2%とわずかな成長にとどまった一方、南部では13%と顕著な増加を示している。
●タイ市場で現在最も人気が高いのは小型バイクである。理由はそのコスト効率、エネルギー効率の高さにある。とはいえ、中型・大型バイクも、主にスポーツタイプの人気の高まりと大型バイクに対する輸入関税の緩和(3)により市場シェアを伸ばしている。
●運輸省陸上輸送局によると、排気量125cc超の新規登録台数は2012年の4%から2017年には16%と大幅に増加している。

●排気量250cc超の大型バイク市場は、主要顧客が高所得層であることから、景気後退の影響を受けにくい。
●過去数年における景気低迷や国内オートバイの総販売台数の落ち込みにも関わらず、大型バイク市場の規模は4倍に成長し、2012年に6,205台だったが2017年には5万台を超えた。
●加えて、大型バイクは、タイのオートバイ市場全体に占める割合においても2012年の0.3%から2017年には2.8%と大きく拡大した。

注: (3) JTEPA(日・タイ経済連携協定)に基づく大型バイクの輸入関税は、2013年の60.0%から2016年には5.45%まで引き下げられ、その後2017年11月には撤廃された

3 タイにおけるオートバイの市場シェア

タイのオートバイ市場では、ホンダが優位を誇る。 2017年の二輪車新規登録台数においては、販売台数がほぼ100万台とホンダが78.3%のシェアを占める。これにヤマハ(14.8%)、GPX(1.7%)、スズキ(1.2%)、カワサキ(0.9%)が続く。

●興味深いことに、タイ唯一の国内ブランドであるGPXが2016年以降顕著に伸びて市場シェアのトップ3に入っている。海外の大手ブランドを超えるまでに要した期間はわずかに3年だった。GPXの主力製品は排気量200cc未満の小型・中型バイクである。価格競争力とタイ全土に販売店・サービス網を展開している点がGPXの成功のポイントだとみられている。また、ベネリ、トライアンフ、BMWなどの西欧ブランドもここ数年大きく成長している。
●大型バイク市場では、日本のブランド(ホンダ、カワサキ、ヤマハなど)が依然として確固たる地位を維持しており、 日本ブランドを併せた2017年のシェアは77%である。ブランド知名度が高いことに加え、日・タイ経済連携協定に基づく関税撤廃の恩恵で価格を抑えられる点も、欧米の競合に対する日本勢の優位な強みである。
●しかし、日本の有名ブランドも、西欧ブランドによるタイ市場への新規参入がもたらす、し烈な競争環境に直面している。

4-1 輸出実績

●世界のオートバイ・部品輸出額のランキングでタイは7位である。 国際貿易センター(ITC)のデータベースによると、2016年のタイのオートバイ・部品輸出額が世界全体に占める割合は約6%だった。
●かつてタイのオートバイの輸出は、CKD(現地組立車)に集中していた。2012年以降、主に海外の大型バイク製造会社がタイに生産拠点を置くようになったことで、CBU(完成車)の輸出が増加している。これにより、オートバイ輸出額は高成長を遂げた(2012年-2017年の平均成長率は13%)。
●タイ自動車研究所(TAI)によると、2017年のタイのオートバイの輸出は、台数ベースでは85万台で前年比8%減に終わったが、金額ベースでは11%の伸びを見せた。理由は、CBU(完成車)の輸出が大きく拡大したことにある。2017年のCBU(完成車)の輸出台数は37万台で、前年度比23%増だった。
●タイ商務省(4)の貿易データベースによると、2017年のタイのオートバイ(部品を含む)の総輸出額は約20億米ドルで、前年比22%の大幅増だった。そのうちCBU(完成車)の輸出は10億米ドルを超え、オートバイの輸出増加に最も大きく貢献した。

注: (4) タイ自動車研究所TAIと商業省MOCの輸出データは別々のソースを元とする。TAIの提供する輸出データは、タイ国のそれぞれのオートバイ製造企業から集められたデータであり、一方でMOCの輸出データはFOB価格を元に財務大蔵省関税局からのデータをまとめたものである

4-2 輸出実績

タイのオートバイ・部品の主要輸出市場での主な実績

●ASEANはタイにとって最大の輸出先であり、タイの輸出全体の33%を占める。これにEU(28%)、米国(14%)、日本(7%)が続く。

5 まとめ

●2017年、二輪車(バイク)業界はいくつかの好材料に恵まれて好調に推移した。商品価格および農業所得の改善が国内市場の需要を押し上げた一方、主要輸出先の景気回復が輸出販売への追い風になった。
●魅力的な投資優遇措置、整備の行き届いたインフラ、オートバイ部品の強力なサプライチェーンが整うタイは、世界大手企業の生産拠点となっている。
●タイではオートバイの所有率が高く、現在市場は飽和状態にあるものの、スポーツタイプ・大型バイクへの嗜好の変化が起きていることで、国内および輸出市場に成長の余地が生まれている。2017年11月中旬に輸入関税が撤廃されたことで国内大型バイク需要にとってさらなる追い風になるだろう。同時に、このことが欧米ブランドとの競争激化を招く可能性もある。
●タイのオートバイ輸出の今後の見通しは明るい。2017年、オートバイ輸出は主要輸出先の全てにおいて大きく拡大した。今後数年間にわたって、近隣諸国(カンボジア、ミャンマー、ラオスなど)から小型・中型のオートバイ需要が高まることが見込まれる。同時に、欧州、米国、中国の大型バイク市場も有望である。

吉越 廉朗

YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
YC Capital Co., Ltd.
Managing Director, CEO

吉越 廉朗

金融機関入行後、本店、海外支店勤務後、技術コンサルティング会社、
金融機関 タイ現地法人代表取締役社長等を歴任。2018年より現職。
タイ、ミャンマー、ラオスの専門家として、本邦企業の海外進出支援、現法の経営課題解決、トラブル対応、現地企業とのアライアンス支援などを数多く手掛ける。
海外駐在経験15年のうち、約8年はタイ駐在。

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