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2018/06/12

タイの空調機器業界

山田コンサルティンググループ株式会社

1. 業界概要

■タイの空調機器業界は、過去10年にわたり国内外両方の市場で重要な役割を果たしている。エアコンおよび関連部品はタイの輸出製品上位10品目の1つであり、2017年の輸出額は電気・電子製品の中で最大となった。 タイは中国に次いで世界で2番目にエアコンの輸出額が大きく、コンプレッサーの輸出額も第6位である。タイはアジアのヘソに位置し、戦略的な要所となり得ることに加え、生産拠点としてのインフラが整っていることから、三菱電機、ダイキン、東芝、サムスン、LG、Trane、ハイアールといった多国籍電気・電子製品企業の製造の中心的な拠点となっている。2017年のタイのエアコン市場規模は約270億バーツで、2018年には300億バーツに達すると見込まれる。

■当初タイはエアコンの部品・部材のほとんどを輸入に頼っていたが、その後徐々に発展を遂げ、現在ではコンプレッサーやコイル、モーターを含め、部品・部材の70~80%を国内で製造できるようになっている。一方で、回路基板や、いわゆる人感センサーのように動作を検出する赤外線センサー、銅やアルミニウムなどの部品・部材については、依然として輸入に依存している。

■2016年時点の年間生産能力は、エアコンが1,500万台(1)、コンプレッサーが2,800万台(2)だった。タイで製造されているエアコンにはセパレート型(室内機と室外機が別れているタイプ)とウインド式(窓枠に取り付けるタイプ)の主に2つの種類(3)があり、セパレート型はタイの家庭用エアコンとして最も広く出回っている。一方、ウインド式は主に輸出向けとされている。

  • (1)Thansettakij News、 2017年2月13日付
  • (2)Thansettakij News、 2017年3月3日付
  • (3)セパレート型のエアコンは室内を冷却する室内機(ファンコイルユニット)と、室内の熱を外気に放散する室外機(コンデンシングユニット)の、2つの別々のユニットで構成されている。これに対しウインド式のエアコンは単一のユニットに全てが納まっているものを指す

■タイの空調機器市場は底堅いものの、空調機器業界は国内外の市場で他の主要輸出国との激しい競争に直面している。具体的には、急速な技術の発達、製造コストの上昇、省エネ・環境製品に対する消費者行動の変化などへの対応に迫られている。

2. 市場概要

近年の実績

■2017年のタイの空調機器市場の生産台数は、大洪水に見舞われた2011年以来初めて前年比2桁減となった。セパレート型の室外機と室内機、コンプレッサーの生産台数はいずれも減少した。

■全生産台数のうち約13~15%が国内で販売されており、2017年末時点の年間国内販売台数は室外機が前年比15%減の161万台、室内機が同13%減の167万台だった。コンプレッサーの販売台数は、同13%減の約760万台だった。多くのタイの大手エアコンメーカーが昨年の国内販売が落ち込んだ原因として、夏季が短かったこと、不動産市場の低迷、家計負債の上昇を挙げている。気象条件は消費者がエアコン購入を決定する主な要因の一つと考えられており、例年であれば2月から6月が最も暑く、販売のピーク期となる。さらに、ダイキンとキヤリアは住宅部門の戸数ベースの売上の減少を要因として挙げているが、これは住宅不動産の引渡し件数の減少と一致している。一方、2017年の商業不動産の引渡し件数は堅調だった。

■2017年のタイのエアコン輸出額は42億米ドルと、前年比2.4%の微減となった。一方、エアコン関連部品は13.8%、コンプレッサーは8.4%、それぞれ前年比増となった。エアコンの輸出額減少の一因としては、タイの主要なエアコン輸出相手国のうち、ベトナムとインドネシアの2カ国への輸出が落ち込んだことが挙げられる。ベトナムでは、住宅用と業務用のエアコン需要がともに急速に高まることを見越して、複数の日本企業(ダイキン、三菱)が現在新工場を建設している。一方、エアコン関連部品およびコンプレッサーの輸出額増加の要因としては、日本や中国といったタイの主要な貿易相手国からの需要が高まったことが挙げられる。日本と中国は、ともにエアコンの輸出額も急増している。

■地域別・金額ベースでみると、2017年のタイの空調機器輸出市場としては全体の約4分の1を占めるASEANが最大であり、これにEUと中東が続く。国別では、2017年のタイの空調機器輸出相手国の上位はオーストラリア、ベトナム、日本、米国、インドが占める。

■2017年のタイの空調機器の輸入は、国内での売上の下落に伴って減少した。タイ最大の輸入相手国である中国のコンプレッサーが流入したことでタイのコンプレッサー市場が供給過剰状態に陥り、コンプレッサーの輸入額も約5%減少した。上記の2つとは対照的に、関連部品の輸入については2016年比で11%増加しており、近年輸入額ベースで堅調に増加している。タイの電気・電子研究所(EEI)はエアコン関連部品の輸入の増加が関税法12条の改正によるものだとみている。この改正は、同条の資格を得た輸入者と輸出者は、電気・電子商品を含む物品に掛かる関税の減額や免除が認められる、というもの。

■空調機器市場全体およびエアコン関連部品市場、コンプレッサー市場のタイ最大の輸入相手国は中国、日本、韓国である。一方、完成品のエアコンについては、2017年のタイの主要な輸入相手国はマレーシアである。

展望と機会

■タイ経済が堅調に成長していることおよび公的部門と民間部門双方の投資額の増加による不動産市場に回復がみられることから、タイのエアコンメーカーの2018年の見通しは明るい。


■国内市場、中でもインバーター部門の競争は、今後さらに激化するだろう。これはタイのエアコン市場で同部門の占める割合が今後さらに増えると予測されているためである。LGエレクトロニクスタイ法人のマーケティング責任者であるNipon Wongsaengarunsri氏へのインタビューによると、従来型に比べて高価であっても長期的にみればインバーターエアコンの方に利点があると考える消費者が増えているという。現在低い水準にあるタイのエアコン所有率は今後上昇していくものと見込まれており、このこともメーカーがタイ市場を拡大しようとする要因になるだろう。

■事業戦略としては、価格競争力の向上、優れたアフターサービスの提供、新製品の投入(例えば省エネ・環境・健康への配慮、耐久性、クラウド連携コントローラー、防蚊機能付エアコンを含む現地の事情などに対応するような製品)に取り組むことが挙げられる。

■主要な輸出相手国に対する輸出が拡大すると見込まれているが、中でも夏季の長いオーストラリアや、エアコンを含むタイ製品への一般特恵関税制度(GSP)の適用を2018年から2020年までの2年間延長した米国については特に期待できる。

3. 主要企業

■タイの電気・電子研究所(EEI)によると、2018年1月時点で、タイでエアコン事業を行っている企業は全259社、コンプレッサーの企業は29社である。空調機器業界内の全企業のうちエアコンの組み立てを行っているのは約5分の1と少数であるが、組立事業は高額投資を受けているとみられ、主に輸出向け製品に対応している。


■会社規模の点では、タイのエアコン業界は中小企業が大多数を占め、かかる中小企業が大企業に製品を供給している。以下はタイのエアコン市場における国内外の主要企業の最近の動向である。

  • ダイキン
  • 日系メーカー。2018年の売上拡大を目指して、価格戦略とアフターサービスの改善に取り組む。インバーターエアコンの新型モデルを最安値の製品価格帯で発売した。直近2017年度の売上は、前年比約5%の上昇を見込む推定100億バーツであ る。ダイキンの売上の中で業務用エアコンが占める割合は40%にすぎないが、60%を占める住宅用よりも速いペースで成長している。同社はタイのインバーターエアコンで最大のシェアを獲得していると自負している。

  • ハイアール
  • 中国の家電メーカー。2018年の主要戦略の1つとして、同社ブランドの高級化を進めることを掲げており、2017年の売上高270億バーツの半分を占めたエアコン部門もその対象となっている。研究開発施設、製造プラント、貿易センターを設けていることから、ハイアールがタイを主要な製造拠点の1つだと考えことが窺える。

  • LG
  • 韓国家電大手。LGは2017年以降タイ市場の全エアコン製品ラインをインバーター型に変更している。これにより、インバーターエアコン市場のシェアを約17%から25%に、エアコンの売上を30%増の35億バーツに拡大することを目指している。また、住宅用エアコン市場よりも安定的な成長が見込めるため、業務用にも力を入れている。

  • 三菱電機
  • 競争の激しいタイエアコン市場のトップ企業の座を守るため、価格プロモーションやアフターサービスを重点的に行っていくとしている。インバーターエアコンの新型モデルを従来のインバーター製品よりも低い小売価格で発売する予定もある。さらに、サービスセンターの数を現在の148から2018年中には155に増やし、2つの業務用サポートセンターを新たに設けることも計画している。2019年3月期の売上高目標を145億バーツとし、このうち60%をエアコンから見込んでいる。

  • パナソニック
  • タイはベトナム、インドネシア、フィリピンと並んで、パナソニックの東南アジア地域の主要な市場である。エアコンは、パナソニックタイ法人の主要製品であり2017年の売上高126億バーツのうち42%を占めている。2017年1月には、タイの製造拠点を年産能力50万台に拡大した。パナソニックはタイの市場シェアを増やすために現地適応化戦略を採るとしている。

  • Saijo Denki
  • タイのエアコンメーカー。これまでは販売代理店を通じて20ヶ国以上に製品を輸出してきたが、現在海外販売オフィスの設立による海外ネットワークの強化を計画している。拠点を設立する最初の国はシンガポールとアラブ首長国連邦の2カ国になる模様。売上のうち海外市場が占める割合は2017年は30%であったが、2018年には40%、2019年には50%にまで拡大することを目指している。Saijo Denkiは、国内市場の中で業務用を有望市場とみており、特に注力していくとしている。

  • Bitwise
  • タイのODM・OEMのエアコンメーカー。立ち上げ以来公共機関用・産業用に注力してきた自社ブランドの「Tasaki」で小売市場に参入することを決定している。2017年より、消費者が国内ブランドを受け入れる余地がより大きいとされる地域を中心とする地方をターゲットに、全国の複数の販売チャネルを通じてTasakiの販促活動を開始している。2017年中には、販売ネットワークを100から200支店に増やしたとしている。収益の約60~70%を国内売上が占めており、残りの30~40%は輸出である。Bitwiseの2017年8月時点の年産能力は約40万台である。

■上述のメーカー以外にもタイのエアコン業界には大手海外企業が存在する。例えば、サムスン、日立、シャープ、東芝、キヤリア、エレクトロラックス、 Trane、Beko、Gree、TCLなどである。国内ブランドには、Central Air、Star-Aire、Uni-Aire、Eminent、Amena、PSIなどがある。

■タイのエアコン用コンプレッサーの主要なメーカーにはSiam Compressor Industry、Daikin Compressor Industries、Kulthorn Kirby、TCFG Compressor (Thailand)、Thai Compressor Manufacturingなどがあり、これらのほとんどは大手エアコンメーカーが保有・運営している。

4. まとめ

■タイの空調機器業界は輸出に依存している。タイからの輸出とタイ市場への参入の両方を目的として、多くの多国籍企業がタイを製造拠点に選んでいる。この傾向は継続しているようで、ここ数年においても、タイに投資するエアコン・コンプレッサーの関連企業数は依然として増加している。

■今後は国内外ともに厳しい競争が見込まれる。タイの電気・電子研究所(EEI)はタイの空調機器業界の主要な競争相手は中国、韓国、マレーシアであるとしている。中国製エアコンは生産過剰となっており、韓国とマレーシアの政府はそれぞれ強力な業界支援を行っているためである。急速に経済が成長しているベトナムも、エアコン部門に対して海外からの投資を惹きつけている。ベトナムのエアコン市場規模はインドネシアに次いで東南アジア地域で2番目に大きく、アジア地域でも5番目の規模である。

■2018年タイ市場の主要企業は、価格、アフターサービス、ブランド認知を戦略として掲げているようだが、購入者がエアコンに求める特徴として優先順位が高いものは省エネ、冷却時間の速さ、耐久性といった機能である。タイの一部エアコンメーカーは、2018年は業務用・産業用が住宅用よりも好調に推移し、その結果市場規模が5~10%拡大するだろうと予測している。

■また、タイのエアコン市場低迷によるリスクを分散させるため、近隣市場でのプレゼンス向上、業務用・産業用の新たな製品ラインの発売、ブランドの高級化に取り組み始めている企業もある。

吉越 廉朗

YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
YC Capital Co., Ltd.
Managing Director, CEO

吉越 廉朗

金融機関入行後、本店、海外支店勤務後、技術コンサルティング会社、
金融機関 タイ現地法人代表取締役社長等を歴任。2018年より現職。
タイ、ミャンマー、ラオスの専門家として、本邦企業の海外進出支援、現法の経営課題解決、トラブル対応、現地企業とのアライアンス支援などを数多く手掛ける。
海外駐在経験15年のうち、約8年はタイ駐在。

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