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2018/08/06

タイの繊維・アパレル業界

山田コンサルティンググループ株式会社

1. 業界の概要

  • 繊維・アパレルは、労働集約的な産業として認識されており、世界の繊維・アパレル市場の主要な生産地である東南アジア諸国は、同製品の輸出を経済成長の原動力としている。
  • タイは繊維・アパレル業界のバリューチェーン全体のどのセクターにも事業者を有する数少ない国のひとつである。同業界は生産段階に基づいて主に以下の三つのセクター(川上・川中・川下)に分類することができる。

(1)川上セクター

  • 繊維は、あらゆる繊維・アパレル製品のもととなる原料であり、天然繊維(綿、麻、絹、ウールなど)と石油などから化学的に合成して作られる化学繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、レーヨンなど)がある。
  • 石油化学産業の川下セクターが力強く支えているタイの繊維製造業においては、合成繊維(人造繊維)が大部分を占め、中でもポリエステル繊維が主流となっている。
  • 綿については、タイは輸入に大きく依存している。他の農産物と比べると生産維持費が高く利益率が低いことから、綿花の生産地域および限界生産性は徐々に減少・低下している。こうした状況により、タイの綿輸入は東南アジア地域で最大の規模になっている(主な輸入先は中国、日本、米国)。
  • 合成の繊維・アパレル製品は、耐久性、柔軟性、軽さ、価格などの特性が特に好まれて、過去数十年間で人気が高まっている。
  • 合成繊維の製造には先端技術が必要とされることから、川上は三つのセクターのうちで最も資本集約的セクターである。

(2)川中セクター

  • 製糸は、短繊維を撚り合わせて作る紡織糸(スパン・ヤーン)と長繊維を撚り合わせて作るフィラメント・ヤーンの製造の二つに大別できる。
  • タイテキスタイル協会(THTI) 発表のデータによると、過去2年間のタイの年間製糸量は80万トンを超えている。製造された糸は、生地の製造やアパレル製品の縫製に使用されている。生地は、通常2種類の方法で織物や編物として製造され、その後染色・プリント加工がなされる。
  • 川中セクターは、必要とされる製造技術によって労働集約的にも資本集約的にもなり得る。タイ投資委員会(BOI)のレポートによると、現在、研究開発に巨額の資金を投じて製造ラインを最先端の自動化ラインに切り替える企業が増えている。

(3)川下セクター

  • タイは、世界のアパレル市場のOEM(相手先ブランドによる生産)を担う主要国として知られる。高品質の製品を作る能力があり、高いスキルの労働力が低コストで活用できるため、タイへは多数の企業が生産を委託している。
  • しかし、タイでは2013年に全国一律の最低賃金制度が導入され、それが最近(2017年)上昇したことに加えて、ベトナム、カンボジア、バングラデシュなど労働力コストが低い他国との厳しい競争にもさらされたことから、バリューチェーン内で最も労働集約的な川下セクターにおける、タイの競争力は低下している。
  • 市場競争力向上のため、関連団体、政府のサポートに加え、メーカー自身による自社ブランドの設立や、より高い付加価値を持つ製品への取組みによって、従来のOEM生産のみに依拠する形態からの脱却・方向転換を図ろうとする動きがある。
  • タイの繊維・アパレル業界のさらなる成長を目指して、アパレル以外の市場拡大、特に機能素材市場への参入に向けた取り組みも始まっている。機能素材の例としては、自動車向け(シートベルト、エアバッグ)、医療向け(包帯、手術用ガウン・手袋)、スポーツ向け(スポーツウェア・用品)、防護用途向け(防弾チョッキ、消防士の制服)、および独自の新たな機能(抗菌加工、撥水加工、温度調整機能など)を有するその他特殊新素材などがあげられる。

2. 市場概要

(1)生産高および国内売上高

  • タイ工業省工業経済局(OIE)発表の最新データによると、2017年通年と2018年第1四半期の繊維製品の原料である合成繊維の生産量は、引き続き堅調に伸びた。要因はその特性によって人気が高まった合成繊維の需要が、家庭用や工業用など最終顧客が多い業界で高まったことにある。一方、糸・生地の生産量はアパレル業界が不振だったことにより減少した。

  • 2018年第1四半期のアパレル製品全体の生産量は、前年比2.6%微減の2,950万点だった。世界最大のサッカーイベントである2018 FIFA ワールドカップの開催を受けて輸出向け受注が増加し、男性用アパレル製品の生産量を押し上げたものの、プミポン前国王死去の影響により派手な服を買い控えようとする動きが、女性アパレル製品売上減少の要因となった。また、タイ経済の成長回復ペースが鈍く、消費者が購入を一層控える傾向にあった。

  • タイテキスタイル協会(THTI)は、健康・運動志向の高まりにより繊維・アパレルの国内売上高が2017年には2,000億バーツ(60億米ドル)を超え、2018年末には約10%増になるだろうとの予想を出している。タイ投資委員会(BOI)の報告によると、スポーツウェアの主要顧客は男性であるものの、現在、女性用スポーツウェアの売上が急増している。
  • 2017年の小売価格に基づく英調査会社ユーロモニターの最新データによると、タイのアパレル製品市場で男女用ともに大きなシェアを有するのは、日系アパレルブランドのUniqlo (Thailand) Co., LtdとI.C.C International Pcl.(タイの男女アパレルを含む消費財の卸・小売会社)であり、男性用アパレル製品のシェアはUniqloが4.9%、ICCが4.7%、女性用についてはUniqloが3.7%、ICCが3.0%となっている。タイのスポーツウェア市場は引き続きAdidasとNikeが席捲している(シェアはAdidas:10.5%、Nike:6.1%)。

(2)輸出入額

  • タイの繊維・アパレル業界は、輸出に大きく依存している。同業界の輸出額は、2016年以降着実な改善をみせ、ほぼ全品目の輸出が伸びたことで2017年通年は前年比2.8%増の約68億米ドル、2018年第1四半期には前年同期比8.7%増の18億米ドルとなった。
  • タイ繊維・アパレル輸出の拡大の要因は、ベトナム繊維・アパレル市場の急成長とスポーツウェア市場の需要急増に併せて米国経済の見通しが明るいことにあるとみられる。

  • 2018年第1四半期に、タイ繊維・アパレル輸出額全体の中で一番大きな割合を占めたのはアパレル製品であり、その主な輸出先は米国(34%)、日本(18%)、ベルギー(7%)だった。一方、繊維製品の主な輸出先はアパレルの主要生産地であるベトナム(10%)、日本(9%)、中国(9%)、インドネシア(7%)、ミャンマー(6%)だった。
  • タイの繊維・アパレル製品の輸入額は、2017年通年は前年比4.3%増の47億米ドル、2018年第1四半期は前年同期比13.2%増で、過去2年間にわたって増加している。輸出の状況と同様に輸入の中で大きな割合を占める品目はアパレルだが、繊維は最も割合が小さい。繊維製品に対しては、他国競合会社との競争からタイの石油化学業界を保護する目的で、高い輸入関税がかけられているためである。
  • 注目すべきは輸出と輸入の製品の割合が時間の経過と共に変化していることである。過去数年間でタイのアパレル製品は、輸入額が増加し輸出額が減少している。理由のひとつには、国内メーカーが労働力コストの低い他の新興市場(カンボジアやベトナムなど)へと製造拠点を移転したことがある。加えて、輸入品の価格低下やEコマース市場の爆発的な成長によって消費者が輸入品を容易に購入できるようになったこともアパレル製品の輸入増につながっている。

  • タイにとって繊維・アパレル両製品の最大の輸入先は中国である。2018年第1四半期の輸入額に中国が占める割合は、繊維が36%、アパレルが51%である。他の主な輸入先としては、繊維製品では台湾(9%)と日本(7%)、アパレル製品ではカンボジアとベトナム(ともに約7%)があげられる(カッコ内数字は輸入額全体に占める割合)。
  • タイテキスタイル協会(THTI)は、2018年の繊維・アパレル製品の輸出額が、2018 FIFA ワールドカップの開催や健康志向の高まりを受けたスポーツウェアの輸出拡大が追い風となって、前年比5-6%増の高成長を遂げるだろうと予測する。さらに東南アジア地域の主要アパレルメーカーの急成長による繊維製品の輸出拡大も期待される。

(3)タイの主要な繊維・アパレル会社

  • 2018年3月時点で、合計4,804社がタイの繊維・アパレル業を展開しており、このうち約半数をアパレル製造会社が占める。
  • 主な合成繊維製造会社(川上セクター)としては、Indorama Polyester Industries、Thai Rayon、Thai Toray Synthetics、Thai Polyester、Polyplex (Thailand)などがあげられる。

  • 主な大手生地製造会社(川中セクター)としては、Luckytex (Thailand)、Jong Sitt、Nan Yang Knitting Factory、Kangwal Textile、Chiem Patana Textilesなど、大手アパレル製造会社(川下セクター)としては、Central Trading、Jaspal、Thai Wacoal、Nanyang Garment、Hi-Tech Apparelなどがあげられる(「大手」の基準は、最新の売上高に基づく)。
  • 世界的なブランド認知の確立に成功しているタイブランドのメーカーやデザイナーとしては、NaRaYa、 Jaspal、Sretsis、Disaya、Vatanika、Flynow、DoiTung、Sirivannavari(シリワンナワリー・ナリラタナ王女が手掛けるブランド)などがあげられる。

3. まとめ

  • 市場競争の激化に加えて賃金上昇にも直面し、当初は労働集約型市場として認識されていたタイの繊維・アパレル業界は、ハイテク・高付加価値製品への対応とそれに併せた方向転換を余儀なくされている。
  • ハイテク製品の開発および様々な税のインセンティブ・優遇制度を通じた中小企業の振興・促進を目的とする政府や関連団体(タイテキスタイル協会[THTI]など)からの支援は、今後、業界の実力を強化しバリューチェーン全体の持続可能な成長に貢献するだろう。
  • タイ中小企業振興庁(OSMEP)は、高品質の繊維製品を製造する技術力を獲得するために、川中セクター、特に機能素材(自動車向け・医療向け)に重点を置くべきだとのコメントを発表している。機能素材は、スポーツウェアと並んで今後の堅調な成長が見込まれる市場である。
  • タイ投資委員会(BOI)によると、タイは世界第12位、ASEANでは最大の自動車生産国であるとされ(2017年の生産台数:約2百万台)、自動車向け繊維の製造拠点として理想的な条件が揃っているとされている。
  • タイ政府は、自国を東南アジア地域の健康・医療サービスのハブにするという目標に向け、医療ツーリズム先としての優位な地位を築こうと取り組んでいる。このことから、今後医療・ヘルスケア関連製品の国内需要が大きく拡大するものと期待される。

吉越 廉朗

YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
YC Capital Co., Ltd.
Managing Director, CEO

吉越 廉朗

金融機関入行後、本店、海外支店勤務後、技術コンサルティング会社、
金融機関 タイ現地法人代表取締役社長等を歴任。2018年より現職。
タイ、ミャンマー、ラオスの専門家として、本邦企業の海外進出支援、現法の経営課題解決、トラブル対応、現地企業とのアライアンス支援などを数多く手掛ける。
海外駐在経験15年のうち、約8年はタイ駐在。

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