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2019/02/25

タイ/自動車の割賦販売およびリース・レンタルの状況

山田コンサルティンググループ株式会社

割賦販売市場の概要と実績

  • タイにおいて最も一般的な自動車の購入方法は割賦である。タイ金融大手のティスコ・フィナンシャル・グループによると、タイの新車購入に占めるローンによる購入の割合は2017年には約80%だったが、低金利を追い風に2018年末までには85%に増えると予想される。
  • タイの金融機関の自動車販売融資の残高は2018年8月時点で前年比12.5%増の1兆370億バーツだった。この伸びは2016年第4四半期以降回復傾向を示している国内自動車販売の増加がけん引した。
  • タイ自動車産業の業績は、2013年Q4以降数年連続で下落した後に、ようやく回復基調となっている。2012年はファーストカー減税*1の終了間際の駆け込み需要で一時的に販売が伸びたものの、減税措置終了後(2012年12月)の数年にわたって需要が伸び悩んだ。タイ工業連盟(FTI)が公表した数字によると、2017年以降消費者の購買意欲が旺盛で、国内の自動車需要が徐々に高まっている。
  • *1ファーストカー減税は、2011年9月にインラック・シナワトラ政権が導入した措置で、排気量1,500cc以下の乗用車または価格が100万バーツ未満のピックアップトラック(排気量制限なし)を初めてのマイカーとして購入した場合、最大10万バーツの税還付を行うというもの。ただし税還付を受けるためには、5年間自動車の所有権を移転してはいけないという条件が付されていた。

  • 融資の供給サイドについては、タイ銀行(BOT)が四半期ごとに実施している調査(BOT監督下の金融機関の上級融資担当者の意見を訊く調査)によると、自動車割賦購入の申請に対する承認比率は2018年初めから上昇傾向が続いているが、2018年第3四半期中に審査基準が厳しくなった。金融機関が融資に際して重視する点は、依然、借り手の信用や担保に対する懸念だと言われている。
  • 債権の質については、2018年8月時点で、自動車販売融資の残高全体に占める不良債権(NPL)*2と
    要注意債権(SML)*3の割合はいずれも前年同期比で減少しており、市場の債権品質が改善していることを示している。とはいえ前四半期比では、不良債権と要注意債権の割合は共に2018年初め以降継続して拡大しており、これは金融状況の不安定さを示している。
  • *2不良債権 (NPL):返済期限が90日以上過ぎているローン
    *3要注意債権(SML):返済期限が30-89日過ぎているローン

  • 自動車会社およびタイ工業連盟(FTI)などの業界団体は、タイの自動車産業に対して楽観的であり、2018年の生産台数を208万台と予想している。国内販売台数については、新モデルの投入とそれに伴う販売店の積極的な販促キャンペーンに支えられて96万~98万台になるだろうと予想している。
  • タイ銀行(BOT)は、今後競争激化が審査基準の緩和をもたらすものの、金融機関の債権品質に対する懸念は依然として払しょくされないだろうと予想している。
  • 日本車ブランドの人気は依然として最も高く、価格や品質が好まれて、タイ自動車市場で3分の2超のシェアを誇る。
  • 自動車・二輪車の割賦購入契約に対する新たな規制が策定され、2018年7月1日に発効した。ただし個人の購入にのみ適用されるもので商用車には適用されない。この新規制は、購入者の保護・権利を向上させる一方で貸し手の負担を増やすものだと言われている。結果としてすでに多くの金融機関が、新規制による貸し手の費用増分を補うため、わずかに利率を引き上げ始めている。
  • 新規制の変更によって、延滞金に課される金利上限の引き下げ、早期返済に対する金利の引き下げ、契約に基づいて行われる全ての返済の詳細リスト(分割金の内訳、分割回数、支払期日など、住宅ローン契約に記載されるものと同様の内容)の借り手への通知の義務化などが行われる。固定金利を課すことも可能だが、貸し手は参照用に実効金利も開示しなければならない。
  • 割賦販売市場の主なプレーヤー

  • 自動車販売融資の提供者は、銀行、ノンバンク*4、販売金融会社*5などのタイプに分類できる。タイ割賦販売業協会(THPA)によると、新車・中古車両方の割賦販売市場において、2018年6月末時点で約69%と最大の割合を占めているのは金融機関およびその関連会社である。これに販売金融会社、ノンバンクが続く。
  • *4ノンバンク:自動車ローンも提供しているリース会社
    *5販売金融会社:購入者に自動車ローンを提供することのみを目的とする特定のディーラーまたは自動車会社の金融子会社

  • 2004年にタイ銀行(BOT)は、金融機関およびその関連会社が割賦販売・リース事業を行うことを認めた。それ以降、両事業における銀行の役割が拡大している。タイの自動車割賦販売市場において販売金融会社の動きが活発化し始めた時期は、ファーストカー減税措置が開始された2011年から減税措置終了後の自動車販売低迷期にかけてである。
  • 下表は、自動車ローンを提供している主な金融機関を総資産の大きい順に示したものである。
  • 自動車販売の成長率が低迷していた期間中、収益維持と新規顧客獲得を目的として、金融機関は2つの新しい金融商品を導入した。1つは「バルーンローン」という金融商品で、借り手が融資契約期間中は低めの分割金額の支払を、期間の最後にはまとまった金額、つまり「バルーン支払」を行うというものである。こうした自動車販売融資は高級車購入に利用されることが多い。もう1つはフロアプラン融資という金融商品である。これは過去2年の間に生まれた「自動車在庫1台毎に紐付く融資プラン(当該車が売れたら紐付融資を返済)」で、これを利用することで自動車ディーラーは高級車の在庫を持つことが可能になる。
  • 下取り(自動車購入のためのリファイナンス)も新たな方法で、借り手が自分の自動車を担保として融資を受けるものである。銀行から融資が受けられない買い手や他の方法よりも早く融資を受けたい買い手をターゲットに利用者数が増え、過去2年間で2桁成長を遂げている。2018年11月、タイ銀行(BOT)は消費者に対する公平性を期すためにリファイナンス事業への規制を強化した。
  • リース・レンタル市場の概要と実績

  • ASAPのブランド名で事業を展開するタイレンタカー大手のSynergetic Auto Performance Pcl.によると、2017年のタイの自動車レンタル市場規模は約425億バーツ(合計約18万台)で、2006年から2017年にかけて年平均成長率(CAGR)15%で堅調に成長した。自動車レンタル市場シェアの70%は法人セクターがけん引するリース・長期レンタルが占め、個人による短期レンタルが残りを占める。
  • 家計セクターにとって一般的な自動車の購入方法が割賦である一方、企業セクターが主に使用するのはリース、とりわけオペレーティングリースである。
  • 企業は、これまで所有していた資産を徐々にオペレーティングリースに切り替えている。これには、節税、管理費の削減、利便性、急成長を遂げているeコマースにサービスを提供する物流市場に対する需要が高まっていることを含め多数の理由がある。
  • 自動車のリース・長期レンタル市場は、短期レンタル市場に比べて、プレーヤーの数が少ないため、さほど競争は激しくない。複数の企業が成長機会を求めて市場参入を試みている。ASAPのレポートによると、大手プレーヤーがすでに市場シェアの50%~70%程度を支配している一方、残りの市場シェアは細分化されている。一部には、主に社内使用のサポートを目的として事業を開始した企業もある。例えば、Phatra Leasing Pcl.、True Leasing Co., Ltd.、South East Capital Co., Ltd.などである。
  • 収益をけん引する主な要因が価格設定である短期のレンタル市場とは異なり、リース・長期レンタルを提供する会社にとっては、大量管理に優れていることや顧客との強固な関係などが他社をしのぐ要因になり得る。
  • 下表は、タイの主なオペレーティングリース会社のリストである。
  • カシコン・リサーチ・センター(KRC)によると、自動車のリース・レンタル市場は、旅行者による短期のレンタルに加えて活況に沸く物流業界にけん引され、今後も成長し、2018年末までに同市場規模は450~459億バーツに達すると予想される。
  • 結論および見通し

  • タイ国内自動車(新車・中古車とも)の販売動向に連動して、2018年のタイ自動車販売融資市場は前年比で拡大しており、2019年も引き続き拡大することが予想される。ただし、2019年の成長ペースは前年より鈍化すると予想される。家計負債が増加していることに加えて金利上昇も予想されており、これらが金融機関による融資審査基準の厳格化をもたらす可能性があるためである。
  • 一方、今後も融資提供者間の競争は激しいことが予想されており、顧客満足度向上のためにマーケティング戦略全体の一部としてデジタル技術・プラットフォームが組み込まれるようになっている。現在、多数の市場プレーヤーが顧客の獲得および顧客ベースの拡大を目指して、下取り(自動車購入のためのリファイナンス)や自動車登録ローンにもサービスを拡大しつつある。
  •  

  • リース・レンタル市場は、短期・長期ともに、2019年もプラス成長するものと見込まれる。短期市場の要因としては、旅行業界の急成長および移動のための画期的なサービス(カーシェアリングなど)の出現があげられる。長期市場では、リース・レンタルサービスによってコスト管理や利便性が提供できる顧客の企業セクター(物流、e-コマースセクターなど)が成長の原動力になるだろう。
  • タイのリース・レンタル市場は、競争が激しいものの、依然として自動車販売融資市場よりも細分化が進んでおり、そのために既存・新規両方のプレーヤーに、より多くの市場機会を提供していると考えられる。
  • 吉越 廉朗

    YAMADA Consulting & Spire (Thailand) Co., Ltd.
    YC Capital Co., Ltd.
    Managing Director, CEO

    吉越 廉朗

    金融機関入行後、本店、海外支店勤務後、技術コンサルティング会社、
    金融機関 タイ現地法人代表取締役社長等を歴任。2018年より現職。
    タイ、ミャンマー、ラオスの専門家として、本邦企業の海外進出支援、現法の経営課題解決、トラブル対応、現地企業とのアライアンス支援などを数多く手掛ける。
    海外駐在経験15年のうち、約8年はタイ駐在。

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