まずはお気軽にご相談ください

個人・中小企業様の海外進出、税務・会計・事業コンサルのご相談は

ご相談窓口(平日 9:00~17:00) 0120-123-456

お問い合わせ

駐在員レポート・コラム

column

海外駐在員が各国の現地情報、税制などを発信しています

このエントリーをはてなブックマークに追加

2019/01/28

タイ/水産・水産加工業界の現状と今後の見通し

山田コンサルティンググループ株式会社

タイの水産物・水産加工品業界は、世界的な水産商品需要の拡大を背景に今後も堅調な需要が予測される。既に多くの日系企業が参入し、ツナ缶の製造を中心とした水産加工事業を手掛けているが、タイにおけるここ数年の日本食ブームを追い風に、今後は同国の内需をターゲットとした事業の拡大にも期待が集まっている。

■タイ産水産物・水産加工品の輸出状況

・地理的優位性等の事業展開上の好条件を背景に、タイは世界有数の水産商品の輸出国に発展した

タイは世界有数の水産商品の輸出国として知られており、地理的優位性や安価な労働賃金など、事業展開上の好条件がその発展を支えてきた。
直近20年の輸出額・輸入額を見るとおおむね増加基調で推移しており、世界的に高まる水産物・水産加工品の需要を勘案すると、安価な他国産の台頭といった懸念材料はあるものの、今後も堅調な需要が期待できる。

・2017年の水産物・水産加工品の輸出総額は昨年に引き続き増加し、2015年の落ち込みから回復傾向

2017年のタイ水産物・水産加工品の輸出総額は5,869百万米ドルで、2年連続の増加となった。主要輸出相手国・地域は米国、日本、豪州、カナダなどで、日本への輸出額は1,149百万米ドル、輸出額全体の20%を占め、米国に次ぐ第2位である。第3位は豪州で、これら上位3カ国への輸出額の合計はタイ総輸出額の約半数を占める。輸出総額はタイ国内におけるIUU*漁業の問題や米国人身取引報告書の警戒リスト入りの影響で2015年に大きく落ち込んだものの、後述するタイ政府などの信頼回復努力が講じて2016年以降は増加に転じている。

*IUU:違反・無報告・無規制(Illegal・Unreported・Unregulated)を意味する

・タイは世界最大の水産加工品の輸出国の一つで、ツナ缶の輸出は世界一

タイ水産物・水産加工品の輸出総額のうち、50%近くがツナやサバ、サーモン、イワシといった缶製品で占められている。ツナ缶生産量全体のうち国内消費は10%以下で、その大部分は輸出向けである。タイ産ツナ缶の輸出単価は、原料価格の上昇・タイ国内での人件費の上昇・バーツ高などの要因により上昇しており、エジプトではより安価なベトナム産ツナ缶の輸入を増やすなど、一部でタイ産ツナ缶からの乗り換えの動きが見え始めている。

・タイ水産加工企業の間では、ツナ缶といった水産加工品以外の分野への事業展開を試みる動きが広まりはじめた

タイの主要輸出品目であるツナ缶は、人件費やマグロの調達価格の上昇、バーツ高などの影響によって成長率が鈍化している。タイ水産加工企業各社は、これまでのOEMによるツナ缶生産に偏った生産体制を見直し、自社ブランドの強化や事業の多角化を試みることで収益の改善を目指している。

■タイにおける水産物・水産加工品の輸入状況

・2017年の水産物・水産加工品の輸入総額は、前年に引き続き過去最高を記録

2017年におけるタイの水産物及び水産加工品の総輸入額は2,888百万米ドルで、前年に引き続き過去最高となった。主要輸入相手国・地域は中国、台湾、インドなどで、日本からの輸入額は142.8百万米ドル、タイ輸入額全体の5.0%を占め、世界第6位である。2017年は特にマグロに大きな伸びが見られ、ツナ缶の原材料用途のほか、日本食ブームに湧くタイ国内の消費向け輸出が増えたことが要因と推測される。

■タイ国内における水産物・水産加工品の消費動向

・外食産業の拡大、輸入品を扱う小売店の増加や健康志向の高まりなどを背景に、タイ国民一人あたりの水産物・水産加工品の年間消費量は微増傾向との予測

都市部を中心とした外食産業の拡大や、スーパーマーケット、ハイパーマーケットといった外国産の水産物・水産加工品を取り扱う販売チャネルの増加、また健康志向の高まりを背景に、タイ国民1人あたりの水産物・水産加工品の消費量は緩やかに上昇すると予想されている。

・日本産水産物は主に外食産業で消費され、小売店で取り扱う場合は高級デパートやレストラン、日系スーパーが中心。中級、大衆向けチェーン店への拡大は今後の課題

近年タイ国民の間ではサーモンに代表されるような脂ののった魚の人気が高く、ハマチや中トロは既に一定の市場を確立している。JETROによると、高級店では空輸を利用するなど日本産を多く利用する一方で、中級、大衆向けチェーン店ではコストを抑えるために殆どは現地調達となっており、日本産水産物に値ごろ感が無い点が課題となっている。

・日本食レストランの中でも寿司関連店舗が大きく増加しており、日本産生鮮品の輸出拡大に追い風となっている

タイでは日本食の人気が高く、日本食レストランはタイ食に次ぐ件数に達し、2018年には3,000件を超えタイでは最も人気がある外国料理となっている。特に寿司関連店舗は2017年の253店舗から454店舗と大きく増加した。先述の通り、日本産水産物に値ごろ感が無い点は課題であるものの、大衆チェーン向けの価格設定努力と併せ、衛生面などにおける日本産の高付加価値性をPRすることが大切である。
なお日本食が好きな理由としては、「健康に配慮」が「味の良さ」に次ぐ割合を占め、中間所得層以上の高所得層の間で高まる健康志向を反映している。

■タイの水産・水産加工業と「持続可能な発展」

・IUU漁業などの違法漁業に対する国際世論の批判を受け、タイ政府は取り締まりを強化することで調達過程の透明化を目指す

米国国務省の人身売買や強制労働に関する2014年の報告書(TIPレポート)の中で最低ランクTier3に分類されたことや、2015年における欧州委員会からのIUU漁業取り締まりの通達を受け、タイ産水産物・水産加工品の輸出額は2015年に著しく減少した。その対策として、タイ政府は違法漁業対策指令センターの創設や人身売買や強制労働が疑わしい事業者の摘発などを講じタイ産水産物の信頼回復に注力。その結果、2016年に発行されたTIPレポートではTier2に格上げされ、2015年に落ち込んだ輸出額が増加に転じるなど、タイ政府の信頼回復措置は一定の成果を上げている。

■タイの水産・水産加工業と「持続可能な発展」

・タイ投資委員会(BOI)は、近代的な製造工程や最新の機械設備の導入などを条件とした投資恩典を整備。一部地域では一定の条件を満たした中小企業への優遇策を打ち出している

現在の政策は、2015年から2021年までの申請に適応され、企業規模や進出地域によって3~13年の法人所得税免除期間が付与される。

・「サステナブル」漁業に順応する動きが、民間大手を中心に見られるようになった

今日の水産業・水産加工業では、欧米を中心にサステナブル(持続可能な)漁業がトレンドになっている。「海のエコマーク」ラベルの認証元で知られる海洋管理協議会(MSC)によると、世界で販売されるMSC認証商品は右肩上がりで増加している。
こうした動向を受け、タイ企業の間でもサステナブル漁業への対応策を打ち出す動きが広まりつつある。

■日本産商品の需要拡大に期待がかかる分野

・製造、卸売、輸出入仲介業など、多くの日系水産物・水産加工企業がタイを拠点とした事業に従事している

タイには多くの日系水産物・水産加工企業が参入している。大手企業はもちろん、先述した日本食ブームを追い風として、日本食レストランや日系食品メーカーからの需要を取り込み現地で活躍する中小企業も多い。

・タイを拠点とした第三国輸出の増加とそのための原材料輸出の一層の拡大に引き続き期待

世界的な水産物需要の拡大から、今後もタイを拠点とした水産加工品の第三国輸出は一定の需要が見込まれる。また、日本の水産物業界にとってはタイ国内需要向け生鮮品の輸出拡大に期待はかかるものの、現地加工向け原材料の輸出が大半を占める現在の輸出構図に遠面は大きな変動は無いとの前提に立つと、タイへの原材料輸出の一層の拡大のほか、タイ国内における加工・第三国への輸出事業の拡大に引き続き期待がかかる。

・日本からタイへの水産物の輸出は食品加工用の原材料がほとんどだが、今後はタイ国内需要向けの輸出拡大に期待がかかる

・輸出品目:寿司を中心とした日本食ブームの影響で、タイ近海で漁獲できない・主要輸入元国が扱わない水産物の取引品目の増加が期待されている。既に市場が確立されているブリとマグロに加え、寿司ネタとして需要が増加しているホタテなどの貝類や、ウニ、カニの人気も上昇中。また、タイへの輸出が禁じられているフグの認知度も向上していることから、今後フグ輸入について政府の規制緩和が待たれる。
・売り込み先:日本の百貨店や日本食高級レストランといった従来の売り込み先に加え、地方で増加する寿司関連店舗を中心とした日本食レストランでの需要掘り起こしに期待がかかる。現在タイでは東部経済回廊構想(EEC)プロジェクトの一貫として都市部と地方部を結ぶローカル鉄道の複線化といった交通インフラ網の整備が進んでおり、寿司ネタなど特に鮮度を重視する商品の輸送効率は大きく改善すると見られる。

■おわりに

タイには各国から水産加工を請け負ってきた豊富な実績や、寿司を中心とした昨今の日本食ブーム、また、BOIの投資恩典では中小企業向けの優遇措置が講じられているなど、投資し易い環境が整備されている。
JETROの調査によると、2017年にタイに進出した日系企業のうち中小企業が大企業を上回っていた。ベトナムなど人件費が安価な国は他にもあるが、水産・水産加工業を営む中小企業が海外展開をする上で進出し易い条件が整っているという点は、他国には無いタイの魅力だと言える。

吉野 弘晃/桐生 貴史

山田コンサルティンググループ株式会社 / YAMADA Consulting & Spire(Thailand) Co., Ltd.

吉野 弘晃/桐生 貴史

-------------------------------------------------------------
山田コンサルティンググループ株式会社
経営コンサルティング事業本部 部長  吉野 弘晃

日本国内にて事業再生、事業成長コンサルティング経験を経て、MBA取得後、海外テーマ(海外進出、現地法人課題解決等)が絡むコンサルティング案件に従事。タイ、シンガポールの短期赴任をきっかけに、日本国内とASEANと連携しながら進めるプロジェクトを推進中。
-------------------------------------------------------------
山田コンサルティンググループ株式会社
YAMADA Consulting & Spire(Thailand) Co., Ltd.
Executive Director, COO 桐生 貴史

外資系コンサルティング会社を経て当社入社。日本での18年に渡る経営コンサルティング経験及び海外進出企業の各種サポート通じて、日本・海外において、幅広い役務を提供。アジア中心に、戦略策定アドバイザリ、業績改善支援、各種デューデリジェンス業務を多数経験。2018年7月より現職。
------------------------------------------------------------

▲ ページトップへ