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2012/08/31

トータルリードタイムの短縮その1

山田ビジネスコンサルティング(株)

今回のテーマはトータルリードタイムの短縮です。ボリュームが多いので、今回と次回(第七回)の2回に分けることに致します。
筆者の経験では、多くの業績不振企業(損益悪化・資金繰り悪化企業)に共通する特徴は、コスト高ではなく、在庫過剰ですが、在庫の金額(残高)はトータルリードタイムの長さに比例して増加します。つまり、多くの業績不振企業に共通する不振原因は長すぎるトータルリードタイムにあると考えます。
したがって、日本ではコストが高くて儲からないからコストの安いアジアに進出するという場合であっても、コスト以上に、トータルリードタイムという要素を検討することが重要です。
以下にトータルリードタイムの伸長要因と短縮策を述べていきます。なお、これらの事項は、海外現地法人と日本の親会社との間や複数の海外現地法人間で、モノのやり取りがある場合に、特に問題となりますが、モノのやり取りが日本国内で完結している企業にも当てはまる問題です。また、メーカーだけでなく、小売などの流通業、弁護士・コンサルタントなどのサービス業、不動産業、その他ほぼ全ての業種に当てはまり、営業・製造などの直接部門業務だけでなく、総務・経理などの間接部門業務などほぼ全ての業務に当てはまる問題でもあります。

1.物流距離の長さ

輸送手段が同じであれば、物流距離の長さに比例してリードタイムは伸びます。これから進出先地域を決定する企業であれば、物流距離・物流のためのリードタイムを検討のうえで、進出先を決定することが出来ます。
しかし、既に進出済みの企業にとっては頭の痛い問題です。進出済み拠点の移転・撤退により、物流リードタイムを短縮することは可能ですが、拠点の移転・撤退は容易ではありません。
船での輸送を飛行機での輸送に切り替えるなど、輸送手段の変更により、リードタイムの短縮を目指すにしても、多くの場合は、輸送コストが増加してしまいます。運搬される製品等の限界利益1が輸送コストに比べて十分に大きければ、検討の余地はありますが、製品等によっては、輸送コストが限界利益を上回ってしまい2検討の余地が全く無いというケースもあります。

物流リードタイム短縮のためには、輸送業者・通関などの物流プロセス・輸送経路の見直しという方法もあります。
また、とても、ハードルの高い方法ですが、従来の日本からの仕入・日本への販売(納品)を現地調達・現地販売(納品)に切り替えるという手もあります。しかし、例えば、現地販売への切り替えの場合、元々は日本に販売する製品の製造コストを安くするためにアジアに進出したのに、リードタイム短縮のために販売先まで替えてしまうというのは、目的と手段が入れ替わっているような、いかにも本末転倒な印象です。とはいえ、物流リードタイムは業績に決定的な影響を与えること、これを短縮する他の方法はいずれも容易ではないことを考えると、本末転倒もやむなしと考えます。
日本からの部品等の仕入を現地調達に切り替えると、発注から納品(受領)までのリードタイム短縮だけでなく、低単価での調達が可能になる場合もあります。まさに一石二鳥です。しかし、これは、うまくいった場合の話です。そもそも、進出先地域によっては、調達先そのものが存在しない場合があります。また、現地に調達先が存在しても、品質・納期に問題があることが少なくなく、当社側で品質・納期をしっかり管理する、ときには指導する必要があります。ついでに、物流距離とは直接関係の無い話ですが、支払サイトの交渉も重要です。

現地販売の場合には、日本と異なる商慣習への対応も必要です。どこまで対応できるか・対応すべきか、とても悩ましいケースもあります。例えば、中国の場合、日本と比べると、組織体組織の関係よりも、個人対個人の関係が重視される傾向にあります。そのため、例えば、製品等を売る前に、まずは販売先の購買担当者個人と当社の営業担当者個人が友達になることや、露骨な賄賂でないにせよ、販売先の購買担当者の個人的な便宜を図ること等が必要な場合があります。昔の日本では別に珍しくもなかったことですが、昨今の日本のコンプラ基準では対応困難な慣習が中国には少なからず残っています。ある日系企業の総経理の名(迷)言、「健康ならば死んでも構わないのか?!」がこのやり辛さを象徴しています。販売先(候補先)との間でも、品質・価格・納期、回収サイトの交渉が重要なことはもちろんです。

現地調達・現地販売いずれの場合にも、相手方との交渉の前提として、相手先候補をリストアップして、良い相手先を選定することが重要です。良い相手先とは、現地で相応以上の力・存在感を持つが、その相手先にとっても自社は重要なパートナーであり、相互に補完し合うことが出来、お互いの意思疎通が容易で、現地の水先案内人になってくれるような相手先です。

1限界利益:売上から原材料等の変動費を控除して計算する利益。

2ここでは現地法人単体の限界利益ではなく、その現法が属する企業グループ全体の限界利益と輸送コストを比較する。

2.各組織間の連携の弱さ

各拠点・各部門・各工程などの各組織間の連携が弱いと、リードタイムは長くなります。以下のようなケースです。これらのケースのように、連携の無いまま、各組織が速く仕事をすればするほど、リードタイムが長くなるという皮肉な結果となります。

(1)連携が弱いケース

1. 販売部門が持っている販売情報や在庫情報が仕入部門にフィードバックされない結果、購買部門は売行きの悪い商品まで仕入れてしまい、売れずに倉庫に眠ってしまう。

2. 販売部門が立てた努力目標売上予算に基づき仕入部門が実際に仕入れてしまい、売上予算未達の結果、売れない在庫が残ってしまう。

3. 各店舗で商品在庫を抱え込んでしまい、ある店舗では欠品になっている商品が、他の店舗では余ってしまい翌シーズンに繰り越されてしまう。

4. 後工程での処理能力を超えて前工程が加工。前工程の人員は、後工程の応援に回らずに、自工程の処理に専念。結果、後工程での加工を待つ仕掛在庫の山が出来ることに(アジア通信第5回ご参照)。

5. 新製品開発が、購買・製造・営業などの部門の参加無しに、製品開発部門だけで行われる。新製品開発から、市場投入までのリードタイムが伸びることに。

(2)連携強化に向けて

以上のケースでは、各組織の連携を強化することによりリードタイムの短縮が可能です。

1. 各組織の連携とは

各組織の連携とは、具体的には、後工程の組織が抱える在庫が一定量を超える場合(過剰な場合)には、前工程の組織はその在庫の製造・仕入・後工程への納品を抑制するということです。そのためには、後工程の組織が抱える在庫の内容・残高を、前工程の組織が把握していなければなりません。後工程在庫の把握は、海外進出により、前工程と後工程が地理的に分断されている場合には、特に重要といえます。

2. 経営資源の再配分

各組織の能力の過不足は連携の妨げとなりますが、各組織の経営資源を再配分することにより、過不足を解消することができます。例えば、後工程の組織の生産能力が、前工程の組織のそれよりも低く、後工程がボトルネックとなっているような場合には、後工程の人員や設備を前工程に再配置することによって、過不足を解消することができます。

3. 各組織の業績評価

連携強化の実効性を高めるためには、各組織の業績評価の方法も重要です。現状、各組織の業績評価が各組織単体の利益だけに基づいて行われているのであれば、これを企業グループ全体の儲けへの貢献度合いに基づく評価方法に変更する必要があります。企業・企業グループのトップが、連携強化・全体最適をいくら強調しても、実際の評価が各組織単体の利益だけに基づいて行われるのであれば、各組織のトップ・構成員は、表向き全体最適に賛同しつつ、実際の行動は部分最適(各組織の利益)に向けられる、まさに面従腹背となるのが関の山です。

以下に、連携強化に向けた評価の特徴を述べます。

まずは、各組織をその利益の額だけで評価することは出来なくなります。例えば、後工程の在庫が過剰であるにも拘わらず、前工程が製品等の製造を続けることにより単体の利益を増加させた場合、この作りすぎによる増加利益に基づき、前工程の組織をプラス評価することは出来なくなります。この場合は、むしろマイナスの評価となります。

また、各組織に帰属する在庫の多寡も評価の要素として織込む必要があります。ここで注意すべきは、前工程の組織と後工程の組織の間に存在する在庫です。このような在庫を、どの組織の帰属とするのか明確に定める必要があります。組織と組織の間の在庫は僅かであると決めてかかってはなりません。多くの企業では、どこかの組織に帰属する在庫よりも、どこの組織の責任でもない在庫の方が圧倒的に多いのが実態です。特に、アジアに進出している企業の場合、進出先地域と日本の間の片道の洋上在庫だけで約2週間分に達する場合もあります。洋上在庫等の組織と組織の間の在庫の内容・残高を把握して、その帰属を明確にすることが、連携強化の第一歩となります。

在庫の評価への織り込みですが、もちろん、在庫の過剰はマイナス評価となります。ところで、前回(第五回)アジア通信で、企業活動をムカデ競争にたとえましたが、優秀なムカデ競争チームは、各メンバーの足をロープではなく、堅い棒でつないでも走ることができますし、その方が速く走れます。しかし、これは、あくまで、極めて優秀なチームにだけ当てはまる話であり、そうでないチームは、直ぐに転んでしまうことになります。また、極めて優秀なチームであっても、障害物を越える、カーブを曲がるなどの場面では、足並みが揃わなくなってしまいます。

硬い棒で足をつないだ状態は、各組織が完全に同期化され、最もモノを速く淀みなく流すことが出来る状態、言い換えると在庫が限りなくゼロに近い状態のたとえです。しかし、各組織をいきなり完全に同期化することは困難ですし、それが可能であっても、突発的な急ぎの、しかも断れない注文が入るなどのイレギュラーな事態への対応力に欠けることになります。したがって、ロープで足をつないで遊びをつくるように、各組織と組織の間にも、いくらかの遊び(ある部門と他の部門のつなぎ目にあえて重複業務を設ける・バッファ在庫を持つ等)を設ける方が現実的です。

前置きが長くなりましたが、このたとえ話のように、ごく僅かな企業(トヨタのような企業)を除き、在庫の過少はモノや業務の流れを止めてしまう危険がありますので、在庫の過少もマイナス評価となります。

以上のように連携強化のためには、各組織や組織間の在庫状況、各組織の人材や設備の能力・稼働状況などの情報が、その組織だけでなく、他の組織や親会社によっても把握されていることが必要です。そのためには、情報システムの導入・運用が必要な場合もあります3
また、以上の取り組みを行うためには、各組織を横断する強力なリーダーの存在が必要です。これらは、今までにない新しい取り組みであり、各組織に、痛みやそれまでの考え方・価値観の変革を要求します。例えば、優秀な人材が別の組織に移籍させられてしまう、これまでは沢山作ることが良いこととされていたのに、これからは作りすぎるとマイナスに評価されてしまう、などです。そのため、リーダーは、各組織に、連携強化・全体最適の必要性・重要性を具体的に粘り強く指し示す必要がありますし、ときには、強権を発動することも必要となります。

以下次回(第七回)に続きます。

3情報システムが常に有効ということではない。経営者において、必要・有用な経営情報が明確になっている場合にだけ情報システムは有効な経営ツールとなる。

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