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2017/11/06

中国での業務リスクと不正対策

山田ビジネスコンサルティング株式会社

■はじめに
 最近、海外子会社の不正や不祥事のニュースを多く耳にします。そのため、海外子会社のガバナンス、内部統制など管理強化の機運が高まってきているように感じています。上場企業にとっては、子会社の不正や不祥事などが、株価に大きな影響を及ぼすため、決して軽視できる問題ではありません。

 

■海外子会社を取り巻くリスクとは
 海外には多くのリスクが存在しています。リスクを大別すると、「外部経営環境」によるものと「内部経営環境」によるものがあります。外部経営環境リスクとは、国家・政治情勢、社会不安、インフレ、制度変更、テロ、内乱、自然災害などが挙げられます。一方、内部経営環境リスクには、意思決定情報リスクと業務プロセスリスクの2種類が存在しています。業務プロセスリスクには、業務リスク、誠実性リスク、財務リスクの3種類があり、中国においては従業員の不正や違反行為などの誠実性リスクの割合が高いと言われています。中国では100人以上の規模の会社では、4割以上の企業で不正が発生しているとのアンケート結果があり、筆者の知人の弁護士によれば、9割以上の会社で不正が行われているとの衝撃的な話も聞いたことがあります。
 このように海外、特に中国を含む新興国では、従業員の不正や違法行為が頻繁に行われており、日本企業が多くの悩みを抱えている経営課題の一つと言えるでしょう。

 

■中国における不正事例
 昨今、筆者は中国子会社の不正調査や内部管理体制構築を依頼されることが増えてきています。不正の種類は、横領や横流し、リベート、架空売上・架空在庫、公私混同や背任、粉飾決算、競業避止義務違反・利益相反、関連当事者取引、情報漏洩など、多岐にわたります。その中でも、在庫に関連する不正は多く行われているように思います。企業の調査時に、在庫数量と金額が帳簿と大きく乖離しているケースは多く、製造業に限らず、アパレルなどの小売業でもその傾向は同様です。
 いくつか不正事例をご紹介すると、とあるアパレル企業では、不良品(衣類の汚れ等が付いたもの)やシーズンオフ商品の横流しが大規模で行われていました。ファミリーセール後の売れ残りについては、数量確認を行わないまま廃棄業者に引き渡され、その商品はインターネットなどで売買され、倉庫担当者は廃棄業者からリベートをもらっていました。不良品やファミリーセール品、廃棄品の数量確認が適切に行われていなかったため、不正が発生したと言えます。適切に商品の出入りを管理していれば、商品の横流しは発生しなかったと考えます。
 製造業で多くある在庫に関連する不正事例では、原材料の端材やスクラップ品の抜き取りです。黒字にするために在庫を使って粉飾決算を行ったり、原価計算の精度が低いために在庫金額が正確に計算されていなかったりと、長年のうちに実際の在庫数量と金額が帳簿上の数量と金額と大きく異なってしまっている事例も多く目にしてきました。このように現物管理が徹底されていない環境では、不正は容易に行われてしまいます。
 また、中国では、不当なリベートや賄賂事件が多く発生しています。販売先の購買担当者からリベートを要求されたり、工事業者からリベートを受け取ったりするケースも多くあります。日本では、公務員との間でよく問題になる賄賂ですが、中国では、商業賄賂はビジネス上で授受される金銭や物品、簿外のリベートなどが含まれ、法律で罰則や懲役刑に発展します。2014年にイギリスの製薬会社が500億円超の罰金、執行猶予付き懲役刑が言い渡された事件もありました。その他にも、実在しない従業員の給与を架空計上し、その架空給与を着服しているケース、費用を水増し請求するなどのケースも頻繁に目にします。

 

■なぜ不正は起こるのか
 では、なぜ不正は発生するのでしょうか。米国の組織犯罪研究者であるドナルド・R・クレッシーが提唱した不正のトライアングルをここで紹介します。①何かしらの動機、②不正を行う機会、③正当化する姿勢・考え方を不正のトライアングルと言い、これら3要素が揃った場合に、不正の「実行」につながることが多いです。以下の表1は、それぞれの不正発生要因の例です。

 

表1:不正発生要因例

不正発生要因

不正発生要因例

① 動機   

(プレッシャー)

• 処遇への不満や納得のいかない叱責等      

• 自身の生活苦、生活レベルの改善からの動機      

 (マンション購入資金、投資損失の補てん など)      

• 外部からの利益供与、売上ノルマがきつい      

② 機会   

• 規程などに明文化されたルールの未整備・不在      

• 管理者や上司のチェックがない      

• 特定の人に権限が集中している(癒着が生まれやすい)      

③ 正当化   

• 一時的に借りるだけ、少しだけなら大丈夫      

• 周りの人も同じように悪いことをしているから大丈夫      

• 規程やルールの不徹底      

• 管理者や上司のチェックが甘い      

 

■不正を発生させないために
 不正を発生させないためには、すべての不正発生要素(動機、機会、正当化)を排除することは不可能であっても、これらの3要素ができるだけ重ならないような環境を社内に作ることが、不正を発生させないポイントです。それぞれ不正発生要因別に不正発生の抑制策は異なっています。表2は、不正発生の抑制策の例です。

 

表2:不正発生の抑制策例

不正発生要因

不正発生の抑制策例

① 動機   

(プレッシャー)

• 適切な人事労務管理      

• 適切なキャリアプランの設定      

• 適切な売上目標・利益目標      

• 従業員面談の実施(従業員の声を聞く)      

② 機会   

• 職務分掌、職務分離の徹底      

• 内部通報制度の確立      

• 在庫、資産、債権等の内部管理体制の整備      

• 本社の内部監査やサンプリングチェックの実施(牽制)      

③ 正当化   

• 経営理念の徹底      

• モラル教育(不正=悪という認識の徹底)      

• コンプライアンス体制の構築      

• ルール、規程の運用徹底      

 

 不正抑制策と言えば、内部管理体制の構築がよく挙げられますが、いくら体制があってもルール、規程の運用が徹底されていなければ、意味がありません。オフィスや工場が散らかっている会社や時間にルーズな会社は、ルールがあっても守られていないことが多くあります。体制の構築に加え、従業員のモラル教育や時間順守や整理・整頓など、締付けではなく、規律を高めることで不正を発生させにくい組織風土を醸成することができると考えています。
 また、牽制機能を働かせることも非常に効果的です。会社のトップが購買や帳簿、在庫などについて、きちんと関与し、チェックを行うことで、牽制機能を働かせることができます。さらに、定期的にチェックをしていれば、異常や不正が起こった際にいち早く発見することもできます。

 

■さいごに
 海外子会社に十分な人数の管理人材を配置できるケースは多くありません。多くの中小企業は、現地駐在員1人~2人の場合が多く、経験のない営業から管理、製造まで慣れない、かつ、多岐にわたる業務を少ない人数で回さなくてはならないことが多いです。
 上手に海外子会社を管理するためには、当然、現地の経営幹部が現地の管理を厳格に行うことが原則です。しかし、現地に任せきりにするのではなく、親会社・子会社間の役割と責任を明確にし、親会社が子会社を十分にサポートする体制の構築も、とても重要であると言えるでしょう。

平井 孝明

山田ビジネスコンサルティング株式会社 海外事業本部 中国事業部マネージャー
山田ビジネスコンサルティング(上海)有限公司 副総経理

平井 孝明

2012年より中国現地法人である山田商務諮詢(上海)有限公司に駐在。
中国現地法人の実態把握、業績改善支援、内部統制、進出・再編・撤退案件から、
クロスボーダーM&A、マーケットやニーズ調査など幅広い業務に携わる。

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