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2014/01/27

日本とは違う、中国の損害保険事情

山田ビジネスコンサルティング㈱

今回は中国でよくある損害保険の問題について事例をまじえてご紹介いたします。

1. 中国の工場は災害・事故リスクの貯蔵庫

これまで、日本の製造業は主に安い労働力を求めて中国に進出してきました。そのため、日本からの社員派遣の数も最小限にされているケースをよく見かけます。この場合、管理部門の人員が削られるのが通常のパターンなのですが、意外とこれが、禍根を残すのです。財務関係であれば会計原則という共通言語があるので、日本人社員がいなくとも、本社がフォロウできる時もありますが、現場での災害や事故リスクへの対応といった総務関係の事柄となると、本社からのコントロールはほぼ不能です。万が一のことがあっても、リスクは現場で、担当外の派遣社員が解決をはからねばなりません。そして、中国ではこのようなリスクは万が一のことでなく、日常茶飯事のことなのです。
台風、洪水、落雷等の自然災害、火事、電気事故、化学薬品流出、交通事故等の人為事故、伝染病、犯罪、暴動等の治安問題・・・日本からの派遣社員が畑違いの災害・事故等への対処にふりまわされる光景はよく目にするものです。筆者のお客様の中には、ある製造担当の派遣社員は運転免許を持たない現地従業員がフォークリフトの操作を誤り、出入りの業者を轢いて骨折させてしまったという報告を工場内の水道管の水漏れで浸水事故の対応中に聞かされることがありました。また、ある会社では技術担当の派遣社員が深夜の落雷で工場全体が停電となった時に製造設備への影響と現地従業員による製品の窃盗を同時に心配しなければならないこともありました。そういう事例でも、中国では、まだ小さなトラブルなのです。台風でふきとばされた工場の屋根やシャッターを修理しながら、汚れた水が原因で流行するコレラ対策のための薬の配布を2千人分用意しなければならなかった生産管理担当者の事例もありました。およそ、日本では経験しないことなのですが、このような難局を乗り越えた後でも、現場の派遣社員には、発生した損害について保険金を請求する作業が待っているのです。むしろ、その手続きの方が現場での対応より面倒かもしれません。保険会社の営業マンのセールス・トークでは、災害時の保険金が簡単に支払われそうなのですが、現実は結構違うのです。

2. 損害保険金の請求は簡単ではない

日本では保険に入っていれば、万が一の時でも被害額がカバーできて安心というのが、ごく普通の日本人の感覚だと思います。しかし、中国ではそう簡単にことは運びません。
台風で屋根やシャッターが壊れた会社の一例をご紹介します。ある会社の工場では暴風でめくれあがった屋根の隙間から工場内に雨水が吹きこみ、積んであった製品が水浸しになってしまいました。駄目になった製品について保険金を請求する時に、保険会社が、詳細な製品リストや被災の経緯についての説明資料等、膨大な量の文書の作成を要求してきたのです。災害の応急措置や後始末に追われる中、正確な在庫数量はわからなくなっていますし、冷静に被災の経緯を覚えている人もいないのですが、客観的な文書ができないと保険金の査定ができないというのが保険会社の言い分でした。
苦労して資料を作って提出すると、次には、被害査定費用の負担に同意しないと査定を開始しないと通告を受けたのです。費用負担についての事前説明を受けたかもしれない人はすでに退職しており、過去の経緯を知る人はいません。高額ではあるものの、やむなく費用の支払いを同意した会社に、更に、追い打ちをかけたのは、査定額の満額の保険金が支払われないという事実でした。保険をかけた金額が実際の対象の価格より少ない場合は、被害金額の補償もその割合に応じる契約になっていると知らされたのです。「比例てん補」という条件の契約で、保険会社には常識のようなものらしいのですが、モノづくりの専門家達にとっては初耳ですし、ショッキングな話でした。それならばと、彼らのとった行動は、在庫の中に不良品を混ぜることでした。水浸しになった製品では、良品も不良品の区別も正確には分からないだろうと考えたのです。手続きを複雑にして保険金額を下げようとする保険会社と被害金額を水増しする会社、この勝負の軍配がどちらにあがったかはわかりません。ただ、査定人は実地調査している際、製品の入った箱に「NG」という表示があったのを見逃してはいませんでした。

3. 失火責任を追及されて裁判に!

水害だけでなく、多くの工場では火気に絡むリスクもあります、油、電気、化学薬品、ガス、タバコの火等原因は数多くあり、火災事故を経験していない工場は少ないといえます。その為に、火災保険に入るのですが、自分達の失火が原因で他者に火災をもたらした場合、日本と状況が違うことを意識している会社は少ないと思います。ある会社が下請け作業で入っている、発注先の工場で不注意が原因で火災を起こしたケースがあります。幸い、大事にはいたらず消火できたのですが、相手の設備や建屋に損害が発生しました。日本では、被害を受けた会社は、相手が保険に入っていない場合は、大概は自社の損害保険でカバーし、翌年上がる保険料分くらいの補償を火元に求めるところです。故意や重過失でない限り、火元は被害額を支払うことはありません。ところが、中国では、保険会社が保険金支払いの条件として、被保険者から、損害賠償責任の求償権を被保険者から譲り受けて火元に請求することがあります。このような違いを知らないまま、会社が下請け先の現場での第三者賠償責任保険をかけていない場合は、とんでもない金額を保険会社から請求されることになります。
このケースでは、火元の会社が請求に応じないでいたところ訴訟に発展してしまいました。失火責任を免れようとすれば、発注先との関係がこじれますし、賠償請求にすんなり応じるわけにもいきません。訴訟を起こした損害保険会社が、日本の本社が契約している損保保険会社と同一である場合などは、その後の関係がギクシャクしないようにと現地の責任者は気苦労が絶えません。設備の保守管理に関する責任なども下請け時の契約に詳細に決めておくとか、適切な保険を付保しておくとか、予防はできたかもしれませんが、なかなか気がまわらないのが中国の現場です。
今、この会社の総経理は自ら保険会社と直接交渉をして、訴訟の取り下げと賠償金額の引き下げを図っています。弁護士に頼んでも、双方の弁護士同士で話を複雑にして訴訟関連費用がかさむだけだとかなり覚めた見方をするのも中国における日系企業の実態といえます。

宮田顯

山田ビジネスコンサルティング㈱
中国事業部部長

宮田顯

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