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2014/09/17

中国人幹部社員との労務トラブル

山田ビジネスコンサルティング㈱

中国現地法人に駐在する日本人社員にとって、日本語のよくわかる中国人スタッフはとても心強い存在です。彼・彼女なら、中国現地の制度や習慣は当然、日本の企業のこともよくわかっていると思われるからです。しかし、往々にして、その思いは、日本人社員の願望に過ぎず、時として悲劇的な結果を生み出すことがあります。

1.信頼できる中国人幹部社員とは

日本企業が現地採用する多くの中国人幹部スタッフは、高い日本語能力を備えています。日本語が話せない中国人社員でも、財務・人事等の管理業務の豊富な専門知識を持っています。いずれも、現地法人の経営には不可欠のものです。ただし、中国に進出して直ぐに、このように有能なスタッフを採用できるとは限りません。
大概のケースでは、進出検討段階で参加した日本語のわかる中国人スタッフが、最初の幹部社員として現地法人の運営に参加し、遅かれ早かれ大きな影響力を持ちます。会社立上げ時は通常の会社業務とは違い、その時限りの仕事というのが結構多いものです。慣れない土地へ派遣された日本人社員にとって、経験したことのない取引先や役所との交渉は苦痛です。その交渉の通訳や、こまごまとした衣食住の世話までしてくれる中国人幹部社員は頼りがいのある人材で、恩人にすら見えます。やがて、中国人幹部社員は自分自身に能力と権限があると勘違いをはじめます。日本人社員はそれを助長します。中国人幹部社員が間違った通訳をしても日本人社員にはわかりませんし、中国人幹部社員が行った手続きに不備があっても、日本人社員はそれを発見する術を持たず、間違いは潜在化してしまいます。なかには、自分の親族や友人を、有用な人材と偽って会社に引き入れ、社内で閥を作る者まで出てきます。後から採用された中国人スタッフは、このような問題に気づいても、我が物顔に振る舞う中国人幹部社員やその閥の社員からの後難をおそれて、見て見ぬ振りです。こうして、「信頼できる」中国人幹部社員による過誤は見えなくなってしまいます。問題が表面化しそうな時でも、幹部社員は何食わぬ顔でそれを巧妙に隠して処理してしまいます。いわゆる、「臭いものに蓋をする」訳です。
日本人のように誤りを認め是正することは、中国では、「過ちをおかした者は許されない」とか「自分でトラブルを処理する能力がない」という評価となります。中国では、そういう人物は信頼するに足りないと評価されるきらいがあります。中国の現場では、日本人社員が「信頼していた」幹部社員が、「信頼されるよう」がんばった結果、問題が更に拡大してしまった、ということが頻繁に起きているのです。

2.問題中国人幹部社員をめぐる労務トラブル

隠された問題というものは、いつかは露見します。日本では、過ちの大小に応じた責任を問われることが多いのですが、中国では過ちの大小にかかわらず、過ちを犯した者が全否定されることが少なくありません。そのためか、問題が露見しても、当事者はその過ちを容易に認めないのです。前述のような中国人幹部社員の問題が表面化した場合、彼・彼女は徹底的に自分の責任ではない、或いは不可抗力であったという言い訳に終始します。日本人であれば、過ちを認め謝れば、立ち上げ時の働きに免じ、もう一度信用しようと思うでしょう。そんな日本人は、自ら問題解決をはかろうとしない中国人の態度に憤りを通りこしてあきれてしまうはずです。会社としては、問題幹部社員に対して警告、減給、配置転換、降格や解雇の処分をするのが普通です。ただ、その処分の仕方の手順を間違えると、逆に処分をする会社にしっぺ返しがくるのです。
ある会社では、職務懈怠を処分の理由としましたが、職務懈怠の具体的事実を詳細に処分のための書面に書かなかった為、中国人幹部社員は、処分の理由が虚偽であると反論してきました。さらには、その幹部社員が処分文書の受け取りを拒否したため内容証明をつけて郵送すると、その幹部社員は第三者に知らせることで当人の名誉を毀損したと、逆襲してきました。
この会社では、その幹部社員との間で労働契約を書面で交わしていませんでした。会社立ち上げ時には書面の必要性に気づかず、ましてや幹部職員であれば、そのようなものは不要であろうと軽視していたからです。最後は、労働契約を締結もせず従業員を酷使している企業であると訴えられてしまいました。この会社は、その幹部社員を解雇しようとしていたのですが、それまでは、その幹部社員に多くを任せすぎていたため、会社(日本人従業員)だけでは十分な証拠を集めることが出来ません。また、会社には違法や不正を黙認した弱みがありました。創業以来の幹部社員だけに、一筋縄ではいきません。さらには、問題幹部社員の勤務年数が長かったので、会社に与えるマイナスの影響は甚大でした。

3.幹部社員を解雇するには

労務トラブルが起きた場合、通常は弁護士を通じて労働仲裁、訴訟で解決します。会社側はその幹部社員が起こしてきた、数々の問題を指摘し解雇の正当性を主張するのですが、幹部社員は会社に命令されてやってきたことだと反論して、大抵の場合は平行線をたどります。仲裁委員会や裁判所も、あまりのこの種のトラブルの多さに、丁寧な審理をすることもなく、中間線で妥協したらどうかという、調停を進めてくることも多いようです。結局は、退職の経済補償金の金額がいくらかということで解決がはかられるケースが大半です。最後は経済補償金の額の多少で決着ということならば、正当性の主張にエネルギーを費やすのではなく、最初から経済補償金の額に争点を絞り込み、トラブルが続いている間は当該社員を缶詰勤務にして係争を続けるのも手です。しかし、このような手も多くの場合、現実的ではありません。問題幹部社員の味方が社内にいるからです。その問題社員は、味方の情報網を使えば、現地の日本人社員よりも多くの会社の内部情報を、やすやすと入手できるのです。そして、会社にとって不利な情報をネタに会社を脅して要求額をつりあげてくるのです。ある会社は、原材料の端材の売却で得た代金を、借入という名目で預金にプールしていることを税務署に暴露するぞと脅されました。ある会社には、缶詰勤務中に妊娠して、会社が解雇できないようにするぞと居直った女性幹部社員がいました。
弁護士を利用せず、日本人社員が徹底的に問題社員と議論をすることで対応している会社もあります。何時間でも何日でも同じ話題について、相手と指摘と反論を繰り返すのです。日本人の特徴として持久戦に弱く、すぐに専門家に依頼するという傾向がありますが、この会社は違います。この会社は、このような問題は幹部社員一人だけでなく会社の中枢にまで根を下ろしていると考え、自らその状況を把握し解決する必要があると考えました。会社からは、相手の非をあげつらってとがめることなく、淡々と問題を指摘して、問題が起こった経緯を会社立上げ当初に遡って説明させたり、幹部社員の会社に対する些細な不満でも長々と話しをさせたりしながら、幹部社員が疲れてくるのを待つのです。すると、実は自己中心的に見えた問題社員の行動も会社によかれと思って行った面が少しはあったということも判明するはずです。社内の人間関係もわかります。人間は疲労がたまってくると理性よりも感情が優先になるようです。時として、そのような相手に理解を示せば、最後は、お互いに気分よく別れるための落としどころを探しだすようになるものです。結果的には、その方が時間的にも短時間で済むことが少なくなりません。その会社では、補償金額も大体は要求の50%以内でおさまるとのことです。円満な解雇を実現するために、耐えて聞く力(=話をさせる力)は専門的な知識よりも有効な武器になるようです。
このケースの勝因は、現地の日本人社員が、状況を的確に判断し粘り強く対話を続けたことだけではありません。日本の親会社の経営陣も、そのような状況を理解し、粘り強く結果を待ち続けたからこそ、現地の日本人社員が適切な対応を選択出来たといえます。他の多くのケースでは、日本の親会社からの、現地に対する無理解な指示が、適切な対応を阻害しています。筆者は、中国でも東南アジアでも、自らの目と耳と足で現地の現実を理解しようとすることがグローバル化の第一歩と考えます。

宮田顯

山田ビジネスコンサルティング㈱
中国事業部部長

宮田顯

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