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2013/05/30

インドネシアの進出において押さえておくべき基本情報

山田ビジネスコンサルティング(株)

1. 投資環境

(1)産業集積

製造業の海外進出に当たり、進出先地域の産業集積の度合いは、極めて重要な意味を持ちます。コストの安さ以上に重要な意味を持っていると考えます。産業集積の度合いは、現地調達・現地販売の可能性を表し、現地調達・現地販売の可能性は、原材料・部品等の発注から商品・製品販売までのリードタイム短縮の可能性を表しているからです。

インドネシアにおける日系企業の最近の現地調達割合は43%で、インドネシアでは産業集積がある程度進んでいることがうかがえます(左のグラフご参照)。但し、業種によって、集積度合いに大きなバラツキがあるものと想像します。インドネシア進出日系メーカーのうち2割程度が自動車関連であり、この分野での調達割合とそれ以外の分野での調達割合は大きく異なることになると思われます。
また、インドネシアは広大な島嶼国家*1なので地域によっても大きなバラツキがあり、更に、同じ地域内でも物流インフラが未整備な故に、距離が遠くなくても、現地調達・販売が困難ということもあります。進出に際しては、現地調達・現地販売の可能性を自社の製品に具体的に当てはめて検討し、調達先・販売先との物流ルートを実際に確認する必要があります。
現地調達・現地販売が出来ない場合には、原材料・部品・商品・製品を海路・空路で運ばなければならなくなり、インドネシアで生産するメリットが大きく減殺されることになります。他国・他地域と陸路で繋がっている国・地域に進出する場合と勝手が異なりますので注意が必要です。

*1 国土面積186万平方キロ(日本の約5倍)、東西約5,000キロ、南北2,000キロ弱、大小17,508の島から構成されている。

ジェトロ 在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査(2012年度調査)
2012年12月18日より

(2)労働法等*2

他の東南アジア諸国と比べると、労働者の宗教活動や労働者の保護に厚い、デモが起きやすい、などの特徴があります。
宗教活動に関しては、企業には、労働者に、その祈祷のための十分な機会を与える等の義務があります。インドネシアでは、国民の約88%がイスラム教徒ですので、特に、イスラム教の文化・習慣を理解することが重要です。礼拝時間の確保やイスラム教断食明け大祭の休暇(約1週間)など、多くの配慮が、法律上も実務上も必要です。
解雇に関しては、労働者を懲戒解雇する場合でも退職金の支払・労働裁判所の許可が必要です。整理解雇の場合にも、法定の退職金の支払が必要になりますが、実際には、労働組合から、これを大幅に上回る退職金を要求されることが通常です。他にも、多くの労働者有利、企業不利の規定・実務が存在します。
インドネシアは、労働組合の活動が盛んという特徴もあります。「インドネシア人は、一人一人は温順であるが、集団になると怖い。」との声もあります。

*2 「アジア労働法の実務 Q&A」初版 商事法務

(3)人件費その他のコスト

以下のグラフの様に、人件費は、中国・タイと比べるとまだ低い水準にありますが、進出に際しては、人件費等の安さだけではなく、インフラや産業集積等及び昨今の人件費の急激な上昇等を併せて検討する必要があります。

ジェトロ資料 第22回 アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較
(2012年4月)より

インドネシアにおける人件費の対前年上昇率は、2012年度 14.7%アップ、2013年度 17.0%アップとベトナムに次ぐ高い上げ幅になっています(以下のグラフ)。人件費の上昇率が高い原因の一つは最低賃金の上昇率の高さです。最低賃金の対前年上昇率は、ジャカルタ周辺で40%を超える事例も出てきています(2013年)。労働生産性の上昇を超えて、賃金が上昇しているように感じます。

賃金対前年ベースアップ率

ジェトロ資料 在アジア・オセアニア日系企業活動実態調査
(2012年度調査)2012年12月18日 より

電気料金は以下のグラフでは、最も安い水準となっていますが、政府の補助金削減・電力需給逼迫などを背景に、今後上昇していく懸念があります。
また、インドネシアでは、2012年10月以降貿易赤字が続いており、インドネシアルピア安(対ドル)傾向にあります。インドネシアルピア安による、輸入品価格の上昇も懸念されます。

賃金対前年ベースアップ率

ジェトロ資料 第22回 アジア・オセアニア主要都市・地域の投資関連コスト比較
(2012年4月)より

2. 日系企業の進出状況

進出日系企業数は1,266社で、製造業が約55%、卸売が21.7%、サービスが6.9%を占めます。
製造業では自動車関連が120社超で進出企業全体の約1割を占めます*3。大手製造業は、トヨタ、日産、スズキ、ヤマハ、ホンダ、パナソニック、エプソン、ナルミ、グンゼ、味の素、大塚製薬、ヤクルト、マンダムなどです。
これら進出日系メーカーの多くは、インドネシアで製造した製品をインドネシア市場で販売しています。インドネシア市場への浸透のために、各社は、興味深い取り組みを行っています。例えば、ヤクルトはインドネシアでもヤクルトレディーが地元に密着して販売している、味の素・マンダムは現地の購買力に合わせるため製品を小分けして販売している、マンダムは市場調査のために現地人の家の中の洗面所や浴室まで見せてもらっている*4、などです。自社製品の良さを現地の人に理解してもらうために、また現地の人の嗜好を自社製品に活かすためには、地に足のついた努力の積み重ねが必要ということを思い知らされます。まさに「流通とは自らの足で作るもの」*5です。

小売りでは、セブンイレブンが117店*6出店しています。セブンイレブンは、店舗面積の半分ぐらいが飲食スペースになっており、許認可上も飲食店と分類されているようです。セブンイレブンはジャカルタのおしゃれな若者にすっかり浸透しています。ユニクロは、ジャカルタ市内に2013年夏に*7、イオンはジャカルタ郊外に2014年中*8に、第1店舗目を出店する予定です。
飲食チェーンの出店状況は、吉野屋20店、大戸屋5店、モスバーガー2店、山頭火1店、トリドール(丸亀製麺)1店*9、などです。まだ大量出店という状況ではありません。飲食店の本格進出はこれからといったところでしょうか。

*3 帝国データバンク調査2012年3月23日時点
*4 「サービス業の国際展開調査 株式会社マンダム(国内)」2010年3月ジェトロ
*5 同上
*6 2013年4月時点 同社HPより
*7 同社プレスリリース
*8 同上
*9 2013年4月時点 各社HP等より

3. 中堅中小企業のインドネシア進出に際しての検討事項

以下に中堅中小企業のインドネシア進出に際しての検討事項を述べてみます。人件費が安いからという理由だけで進出することは危険です。念のため。

(1)インドネシア市場の成長を自社の成長に取り込めるか

小売り・サービス業はもちろん、製造業であっても、インドネシア市場の成長を自社の成長に取り込めるかどうかが、インドネシアでの勝敗を決する重要ポイントと考えます。下図のように、売上増加と賃金増加が循環するイメージです。この循環は、年々増加する現地の人件費をカバーするためにも必要です。
反面、インドネシアは周囲を海で囲まれていますので、近隣諸国の市場の成長を取り込むことが容易ではありません。また、インドネシア国内であっても、島嶼国家であること、同じ島内でも物流の未整備故に、国内の他地域の成長を取り込むことが困難な場合があります。

製造業に関しては、現地での販売先の開拓のために、現地でもマーケティング機能・営業機能を持つことの重要性が今後ますます高まっていくことになると考えます。現地の成長メリットを取り込めず、人件費高騰のデメリットだけを受けて、苦戦している日系メーカーは少なくありません。

(2)撤退時のシミュレーション

インドネシア進出に際しても、進出に先立ち事業計画を策定することは重要ですが、計画の中には、撤退時のシミュレーションを織込むことが望ましいと考えます。加えて、そのシミュレーションを数年おきにリニューアルすべきと考えます。事業規模の変動等により撤退コスト等も変動するからです。
インドネシアからの撤退は容易ではありません。撤退に際して必要な資金・期間を進出段階から検討しておくことは重要です。
労働者保護の厚さ、労働争議勃発・紛糾の懸念、撤退に絡む労務や法的手続きの運用の不透明性、撤退時に必ずといっていいほど行われる税務調査、租税債務確定までに数年かかることがある等、インドネシアからの撤退には多くのハードルがあります。
このような多くのハードルがある中でも、日系企業はきちんと正規の手続きに則り撤退するようですが、アジアの某国の企業では撤退の手法として”夜逃げ”が当たり前になっているようです。このような日系企業の生真面目さをインドネシア人は敬意と好奇(何故そこまで真面目なのか?)の入れ混じった目で見ています。

(3)為替リスク

インドネシア国内での販売に際しては、売上は現地通貨(インドネシアルピア。以下IDR)建てになる場合があります。対して、例えば、支払は円(例えば、インドネシア進出資金を円建てで借り入れ)の場合、IDR安・円高という局面では、円建て元利金の支払負担が増えてしまうことになります。このような局面に備えて、為替予約などのリスクヘッジ策を打つことも重要ですが、それ以上に、借入金残高そのものを抑える(バランスシートをスリム化する)と同時に、為替リスクをカバーできるだけの、借入金残高に対しての高い利益率を確保することが重要です。
特に多額の借入により調達した資金により、インドネシアに進出する場合は、事業計画策定や業績管理に際して、売上高に対する利益の高低よりも、借入金残高に対する利益の高低を重点的にチェックすることが望ましいと考えます。

(4)労務・税務その他法務全般

当たり前の話ですが、インドネシアの法律は日本と異なります。例えば、日本の会社法には、取締役の第三者(会社債権者など)に対する責任の規定があり、インドネシアにも似たような規定がありますが、日本の会社法では、取締役の故意・重過失の立証責任が第三者にあるのに対し、インドネシアでは取締役に無過失等の立証責任があります。このインドネシア法の規定は、取締役が第三者に責任を負うという結論は日本法と同じですが、実際の適用範囲は日本よりはるかに広く、似て非なる規定といえましょう。
また、法律の運用・解釈にも問題があります。行政官や地域によって法の運用・解釈が異なるなど法治国家とはいえない状況が少なからず残っています。しかし、だからといって、現地の法制度を理解することが無意味ということは決してありません。法治国家ではなくても、法制度を理解し、シロ・グレーゾーン・クロの境界を理解することはやはり重要です。親会社だけでなく、駐在員自ら現地の法制度のポイントを理解することが、贈収賄その他のトラブルに巻き込まれないために重要です。
以上のような状況から、現地事情に精通した日本人弁護士その他のプロフェッショナルに、何でも相談できる体制を平素から整えて置くことも重要です。現地事情に精通した日本人プロフェッショナルは、現地の常識と日本人の常識のギャップを埋めてくれる通訳としても重要な存在といえます。

(5)良い現地パートナー

最終消費者に自社の商品等を販売しようとする場合には、現地パートナーと組んで、現地の市場に参入することが効率的なだけでなく効果的であると考えます。インドネシアの流通形態は日本のそれとは大きく異なり、加えて、物流環境も未整備なため、インドネシアの市場を一から自力で開拓するには、莫大なエネルギーと時間がかかってしまうからです。
現地パートナーはもちろん、自社にとって良いパートナーでなければなりません。良いパートナーとは、現地で相応以上の力・存在感を持つが、そのパートナーにとっても自社は重要なパートナーであり、パートナーと自社が相互に補完し合うことが出来、お互いの意思疎通が容易で、現地の水先案内人になってくれるようなパートナーです。
現地のパートナーが良いパートナーとなるためには、パートナーとの交渉や契約内容の吟味などのツメも重要です。ツメが甘かったために後で苦労している会社も少なくありません。「こんなことをいうと相手が不快に思うかもしれない」との配慮や何となくの雰囲気で話を進めることは、後に大きな禍根を残すことになりかねません。パートナーとのツメに際しては、喧嘩をしても構わないどころか、むしろ喧嘩をするぐらいの方がいいと筆者は考えます(筆者は決して武闘派ではありませんが)。また、喧嘩するなら早い方がいいと考えます。喧嘩をした方がお互いのことをよく理解できるからです。

現地パートナーを探す前提として、近代市場・伝統市場どちらの市場で自社商品を販売すべきか、流通の各段階や各地域におけるプレイヤーの顔ぶれ・強み・弱み・属性・特徴、流通の各段階におけるその商品の価格(競合の卸値なども)等を把握しておく必要があります。これらの事柄を把握するためには、各種レポートの取り寄せだけでなく、マーケティングリサーチ会社に調査を依頼することが有効です。また、現地パートナー候補のリストアップ・絞り込みに際しては、ビジネスマッチング会社の活用も検討に値します。
もちろん、マーケティングリサーチ会社・ビジネスマッチング会社の活用に加えて、自らの足と目と人脈を使い、パートナー候補の属性を確認する努力も不可欠です。
ちなみに、マンダムは、零細小売店から、どの流通業者から商品を仕入れているのかを聞き取ることによって、そのエリアで強い流通業者を探り出し、その上で、その流通業者に直接コンタクトをとっているそうです。同社によれば、「商品や商品を作る為の設備や技術者、資金は日本から現地に持って行けます。しかし流通はそうは行きません。」とのことです*10。

以上、マーケティングリサーチ会社・ビジネスマッチング会社など、中堅・中小企業が日本国内の市場で事業を行ううえでは、あまりその必要性を感じてこなかったような事を書きましたので、大袈裟に感じられた読者様がいらっしゃるかもしれません。そんな大袈裟なことをせずに、進出先の調査や準備のために、まずは、現地で小さな規模で事業を始めるという方法もあります。この方法は確かに得策です。しかし、現実には、現地で小さな事業を始めたが、その後、いつまでも小さな事業のままというケースが少なくありません。結果的に戦力の逐次投入・過少投入になっているというケースです。戦力の逐次投入・過少投入⇒成果が出ない⇒戦力の追加投入見送り⇒成果が出ない・・・・という悪循環がだらだらと続くだけとなります。戦力の逐次投入・過少投入ゆえに大きな損失を出すこともないので、だらだらと続き易いともいえます。
成長市場に見合った自社の成長を実現するためには、戦力の集中投入が必要です。集中投入の前提として、ターゲットの絞り込み、絞込みのためのマーケティングリサーチ会社・ビジネスマッチング会社の活用、そして最後に「自らの足」でツメを行うということです。

インドネシアで勝つためには、攻め(市場・販路開拓など)と守り(現地の法制度・実務への対応、物流の確保など)の両面からの取り組みが必要です。

*10「サービス業の国際展開調査 株式会社マンダム(国内)」2010年3月ジェトロ

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