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2013/04/25

海外進出におけるインドネシア市場の魅力

山田ビジネスコンサルティング(株)

インドネシアは、巨大な成長マーケットとして、アジアで最も注目されている国の一つです。約2億4,000万人の巨大な人口、増加し続ける生産年齢人口、大きな伸びシロを持つ個人消費等々、インドネシアは市場規模・成長余力共に魅力的です。

1. 概況

(1)進出に際しての検討事項

前述の通りインドネシアの人口は約2億4,000万人ですが、首都ジャカルタが所在するジャワ島(以下の地図ご参照。日本の約1/3の広さ)だけでも約1億3,000万人もいます。ASEAN10カ国の人口合計約6億人、日本の人口約1億3,000万人弱と比較すると、その巨大さが一層明確になります。首都ジャカルタの人口も約960万人と、東京や上海に比肩しうる規模を誇ります。

<インドネシア地図>

また、インドネシアでは、消費の主役である年齢層の人口(生産年齢人口*1)の力強い増加が見込まれています。インドネシアは、ASEAN10カ国の生産年齢人口増加の牽引車ということができます。

*1 15歳以上64歳以下の人口。消費だけでなく、生産力の担い手の人口でもある。

<インドネシア 生産年齢人口推移>

<アジア各国・地域 生産年齢人口推移>

2010年国連資料より

インドネシアの一人当たりのGDPは約3,500ドルで、中国(約5,400ドル)やタイ(5,400ドル弱)と比べると低い水準にあります(2011年)。ちなみに、2009年における冷蔵庫の普及率は、中国約60%、タイ87%に対して、インドネシアは約25%に過ぎません*2。この国の消費の伸びシロの大きさをイメージすることが出来ます。

次に、実質GDPの成長率を見ていきましょう。以下のグラフをご覧下さい。インドネシアの経済成長率は、他のアジア諸国と比べて、著しく高いという水準にはありませんが、上下のブレ幅が小さく、安定的という特徴があります。2007年以降は6%強の成長が概ね続いています。
2009年はリーマンショックの影響で落ち込みますが、それでも4.6%の成長率です(ちなみ、この年、タイはマイナス2.2%)。この要因の一つが、インドネシア経済の内需の大きさです。インドネシアのGDPに占める民間消費の割合は60%弱で、先進国並みの高い水準にあります。

*2ユーロモニター2009

ジェトロ資料より作成

以下のグラフは、インドネシアの直接投資受入額の推移です。直接投資はインドネシアの経済成長の牽引車の一つです。2006年以降増加傾向を示しております。ユドヨノ政権(2004年~)に対する海外からの信任の厚さを示している指標ともいえそうです。以下のグラフには載っていませんが、2012年の受入額は前年比で26%増加しています。

ジェトロ資料より作成

2. 日本との関係

インドネシアと日本は、従来から深く太い関係にあります。
クルマのほとんどが日本車(しかも、日本よりも日本車のシェアが高い)、そこかしこにあるセブンイレブン、ドラえもんやナルトなど日本アニメの高人気、インドネシア版AKB48であるJKT48が着実に現地でファンを増やしている等々、ジャカルタ市街を少し歩けば、インドネシアと日本の関係を目で見て確認することができます。
日本はインドネシアの最大の輸出相手国です。インドネシアは、LNG、石炭、銅、ニッケル等の重要な供給源となっています。
また、インドネシアからみて日本は最大の援助国であり、インドネシアは累計ベースで我が国ODAの最大の受取国でもあります。

ところで、インドネシアは、17世紀から1942年3月までオランダによる植民地支配、その後は日本軍による支配を受け、1945年8月に独立を宣言しました。しかし、旧支配国オランダは、その独立を承認せず、インドネシアとオランダとの間で独立戦争が始まります。この時点で日本軍は既に敗戦しており、インドネシアに駐留していた日本兵は戦闘活動を行ってはならず、武器を連合国側に引き渡すことになっていました。しかし、敢えてこの命令に反し、3,000人以上の日本兵がインドネシア独立義勇軍に参加し、オランダと戦ったそうです。
「敢えて大命に抗して独自の行動に出でんとす。言う忽(なか)れ敗戦の弱卒天下に用無しと。生を期して米英の走狗たらんよりは,微衷に殉じて火に寄る虫とならん。天道は正義に拠る。世界史の赴く処、亦正義に非ずして何ぞ。敢えて不遜の行動に出る所以。希くばご容赦あらん事を」。インドネシア独立運動に身を投じた日本軍学徒兵宮山滋夫氏が仲間の学徒兵に残した遺書です*3。インドネシアと日本の関係の原点を感じることができます。

*3 「昭和史 七つの謎」 (講談社文庫) 保阪 正康

JKT48 インターネットから転載

3. 投資環境

インドネシアの市場は規模の大きさと高い成長可能性を持っており、大変魅力的ですが、懸念材料もいくつかあります。

(1)小売・サービス市場・流通形態

小売市場は、高い成長が期待されています(下表参照)。

カンパサール The Daily NNA別冊 第11号より抜粋 筆者が加工。

上表では、スーパーマーケット・ハイパーマーケット・コンビニエンスストアを近代市場、個人食料品店・屋台を伝統市場として分類しています。近代市場と伝統市場の違いは、店舗の形態・顧客層・プロモーション方法等の違いだけではなく、その店舗に商品が届けられるまでの流通経路・流通業者等の違いも意味します。自社の商品をどちらの市場で売るかにより、営業の相手先・やり方・取引条件等が異なることになります*4。

インドネシアに限らず、アジアの最終消費者向けて、商品を販売しようとする場合には、その国・地域ごとの流通形態を押さえることが重要です。

*4 平成22年度 東アジア食品産業海外展開支援事業「インドネシアにおける進出可能性調査 報告書」2011年3月 目黒良門(執筆者代表)に詳細に記述されている。

ジャカルタの巨大ショッピングセンター
セントラルパークモールの夜景
2013年3月筆者撮影

インドネシアはイスラム教国家です(世界最大のイスラム国家)。そして、イスラム教には、豚肉を食べない・酒を飲まない等のタブーがあります。イスラム教徒の人口比率が約88%*5であることを考えると、豚肉・酒関連等の市場は決して大きいとはいえません。インドネシアに飲食店等を出す場合に注意が必要です。

*5 外務省2012年4月

(2)外資規制

他のアジア諸国同様インドネシアにも外資規制があります。その内容は、インドネシア投資調整庁(BKPM)が定める”ネガティブリスト”に記載されています。小売・サービス業は、外資の単独参入が認められていません。そのため、この分野で進出する場合には、現地のパートナーとの合弁やフランチャイズ等の形態をとることになります。

(3)インフラ

全体的に今ひとつです。
物流インフラは脆弱です。ジャワ島を縦断(横断)する道路や鉄道はあまり整備されていません。また、ジャカルタやその近郊でも、鉄道が整備されておらず、市街地の道路、幹線道路共に慢性的に渋滞が発生しています。ジャカルタには、「インドネシア人はクルマの中で年をとる。」という言葉がありますが、これは比喩というより日々の現実をありのままに描写した言葉といえます。雨が降ると目も当てられません。渋滞が一層激しくなるだけでなく、ジャカルタ市内では冠水する場所も出てきます。
もちろん、ジャカルタには地下鉄や高架道路を整備する計画もありますが、これらの計画が実現するまで、相当長い期間がかかりそうです。
港湾にも問題があります。取扱貨物量が港湾のキャパシティを超えてしまい、物流が停滞することも起きているようです。
更に、ジャカルタ市街地でも、時々停電が起きる、インターネットの回線速度も遅いなど、物流以外のインフラもまだまだこれからといった状況です。
このようなインフラ整備の遅れがインドネシアの経済発展の大きな障害になってくるものと思われます。
なお、ジャカルタ近郊には、インフラの整った日系の工業団地がいくつかありますが、いずれも人気が高く、空きが少ない・価格が高騰しているという状況にあります。

ジャカルタ郊外の渋滞
2012年5月筆者撮影

ジャカルタ郊外の日系工業団地MM2100
2012年5月筆者撮影

(4)政治・行政・司法

他のアジア諸国同様、インドネシアでも賄賂・汚職が蔓延しています。2004年10月の就任以来、ユドヨノ大統領は賄賂撲滅をスローガンに掲げており、一定の効果を収めつつあるとも言われていますが、実態はまだまだのようです。現在でも、警察・税関・税務署・裁判所など、広範囲に亘って、賄賂が横行しているという話を聞きますし、賄賂はインドネシアの文化であるので減らないと言う人もいます。インドネシアの玄関口であるスカルノ・ハッタ空港の建設費は、シンガポールのチャンギ空港と同じぐらいかかっているという話も、こちらでは、まことしやかに語られています。見た目でいいますと、チャンギ空港はスカルノ・ハッタ空港と比べものにならないぐらい立派です。
昨年(2012年)も、日系企業の現地法人社長(日本人)が、現地法人の従業員解雇に関する労使訴訟に絡み裁判官を買収したとして、禁固3年、罰金170万円の判決を受けるという事件が起きています*6。インドネシアに進出する場合には、他人事として見過ごすことのできない事件です。

ユドヨノ大統領のスタイルは良くも悪くもリベラルといわれています。そのため、同大統領に対して、リーダーシップを発揮していない、それどころか、何もしていないとの手厳しい評価もあります。それでも、スハルト大統領退任(98年)前から数年間続いた不安定な政治情勢は、ユドヨノ大統領就任後、平穏を保っています。「多様性と寛容」をスローガンとすることによって多民族・多宗教の国家を絶妙なバランス感覚で統治しているといえます。
ただし、2014年は大統領改選の時期であり、次の大統領の方針如何によっては、これまでとは異なる政治の動きがあるかもしれません。インドネシアは、ジャワ人、スンダ人、マレー人、マドゥラ人、華人など、”東洋のユーゴスラビア“と呼ばれるほど、多様な民族により構成されている国家です。様々な民族が住む大小無数*7の島々が一つ国家を構成しているのは、たまたま、それらの島々がオランダによって支配されていたからに過ぎないともいえます。それだけに、インドネシアの政策は、強権とリベラル、中央集権と地方分権との間を揺れ動き易いともいえます。次回の大統領選挙の成り行きを見極めるまで、インドネシアへの投資を控えている企業もあります。

*6 時事ドットコム 2012年12月4日
*7 インドネシアは大小17,508の島から構成されている。

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