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2017/06/13

ベトナムにおける移転価格税制の改正

税理士法人山田&パートナーズ

2017年5月より新たな移転価格税制が導入されました。国別報告書、マスターファイル、ローカルファイルの3つの文書の作成が規定され、より包括的なものとなりました。一方で当局からの提出要請に係る期限短縮化もあり、納税者側として日本親会社との連携による準備が一層重要となります。

 ベトナムでは2005年に移転価格税制が導入されて以降複数回の改正が行われてきました。2017年2月には政令20号(Decree 20/2017/ND-CP号)が公布され、5月1日より適用が開始されました。
 本コラムではベトナムの移転価格の概要と改正点を確認するとともに、この改正による影響についてまとめます。

 

1.ベトナムにおける移転価格税制の概要
(1)関連者の定義
 ベトナムの移転価格税制においては、資本関係だけでなく資金依存や取引依存関係などにも着目し、関連者の範囲は広く定められていました。今回の改正では、技術依存および取引依存による判断基準が削除されました。
 また、ベトナムにおいては国外の関連者だけでなく、国内の関連者も対象となるため留意が必要です。

基準

現行(通達66号)

改正(政令20号)※51日より施行

持分比率

・  20%以上を直接または間接に保有。

・  最大株主であり、10以上を直接または間接に保有。

・  25%以上を保有(直接・間接)

・  最大株主であり10以上を直接または間接に保有。

資金依存

・  借入金額が資本の20%以上に相当、かつ中・長期借入金総額の50%以上

・  借入金額が資本の25%以上に相当、かつ中・長期借入金総額の50%以上

役員派遣

・  役員等総数の半数以上を決定する、または当該決定された役員等が他方の経営活動または財務活動に対する決定権を持っている 等

・  役員等総数の半数以上を決定する、または当該決定された役員等が他方の経営活動または財務活動に対する決定権を持っている 等

技術依存

・  無形資産または知的所有権への対価が製品の原価(または経費)の50%以上

 

規定削除

取引依存

・  売上総額(製品の種類毎に算出。)の50%以上

・  製品の総価(固定資産の償却費を含まず)の50%以上

・  契約書に基づく経営協力関係

 

 

規定削除

 

同族関係

・  親族によって支配

・  親族によって支配

その他

・  恒久的施設関係にある 等

・  恒久的施設関係にある 等

 

(2)文書化免除要件
 改正前の制度では免除要件は設けられていませんでした。今回の改正により次のいずれかの要件を満たす場合には文書化義務が免除されます。

・  売上高が500億ベトナム・ドン(約25千万円)未満であり、かつ関連者間取引総額が300億ベトナム・ドン(約1億5千万円)未満である場合

・  事前確認制度(APA)に署名している場合(年次報告書を適切に提出している場合に限る)

・  売上高が2,000億ベトナム・ドン(約10億円)未満で次の要件を満たす場合

イ.  単純な機能のみを有し、無形資産を使用していない。

ロ.  売上高EBIT(利息支払・税引前利益)が業種ごとに定められた下記の割合以上である場合

EBIT ÷ 売上高 ≧ 販売業5% 製造業10% 加工業15%

 

(3)申告等
 決算日以後90日以内に、各事業年度の法人税の確定申告書とともに指定様式を用いて申告しなければなりません。また、税務当局から移転価格文書の提示を求められた場合には、税務調査による場合には15営業日以内に、それ以外の場合には30営業日以内に提出しなければなりません。

 

2.新制度のポイント
(1)日本本社との連携
 日本の移転価格税制では、文書化免除の要件を次のとおり定めています。
 ・国別報告書、マスターファイル

対象

直前の最終親会計年度の連結総収入金額が1,000億円未満の多国籍企業グループ

適用開始時期

201641日以後に開始する事業年度

提出期限

事業年度終了の日の翌日から1年以内

 

 ・ローカルファイル

対象

① 当該一の国外関連者との間の前事業年度(前事業年度がない場合には当該事業年度)の取引金額(受払合計)が50億円未満、かつ

② 当該一の国外関連者との間の前事業年度(前事業年度がない場合には当該事業年度)の無形資産取引金額(受払合計)が3億円未満である場合

適用開始時期

201641日以後に開始する事業年度

 

 このため、ベトナムの文書化免除要件(1.(5)に記載)よりも要件とされる金額が大きいため日越間で作成義務が異なる場合が生じます。

 

①日本本社が国別報告書やマスターファイルの作成義務がある場合
 日本本社が国別報告書やマスターファイルを作成している場合には、これを翻訳してベトナム子法人に備え置きます。ただし、提出期限が日本とベトナムでは異なっているため、日本本社と連携し、適切なスケジュール管理が必要です。
(例1) 3月決算法人の場合

事業年度

日本の提出期限

ベトナムの整備期限

20173月期

20183

(改正適用前)

20183月期

20193

20186

20193月期

20203

20196

 

(例2) 12月決算法人の場合

事業年度

日本の提出期限

ベトナムの整備期限

201712月期

201812

20183

201812月期

201912

20193

201912月期

202012

20203

 

 ②日本本社が国別報告書やマスターファイルの作成義務がない場合
  日本本社が国別報告書やマスターファイルの作成義務がないとしても、ベトナム子会社においては免除要件に当てはまらない場合も想定されます。したがってベトナムでの提出期限を考慮し、日本親法人と連携をしながら文書作成を行う必要があります。

 

(2)新たな申告様式への対応
 改正により新たな報告様式が導入されることで、従来の様式(様式03-7)より詳細な申告が求められています。具体的には、関連者取引にかかる損益と、それ以外の第三者間取引にかかる損益を区分して記載する必要があります。経理データの整理などの対応が必要になると考えられます。

 

3.今後の見通し
 今後新制度に基づくガイドラインが公表される予定ですので、当該通達の内容の検証が必要と考えられます。

鈴木 幹大

税理士法人山田&パートナーズ
税理士

鈴木 幹大

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